三輪 ページ4
昼飯の時間。
こちらに来た稲野ちゃんと一緒に、それぞれ弁当箱を開ける。
明太子と刻み海苔が混ぜられたふりかけが
白ご飯一面に掛けられており、私の食欲をそそる。
さて食べよう、とした時に、稲野ちゃんが机を軽く叩いた。
彼の方を向くと、彼は私にある方向を見る様に無言で訴えてきた。
その先には。
鈴原さんが、弁当箱も出さないまま俯いていた。
稲野ちゃんと顔を見合わせ、一旦弁当の蓋を閉じると
私らはそちらに向かう事にした。
あ「どうしたん?お昼食わんの?」
『オヒル…?』
稲「お昼ご飯。えっと…。」
あ「英語で言うと、Lunch。」
稲「そうそう。」
『Lunch…。』
あ「もし良かったら、一緒に食わん?
一人で食うん、寂しいやろ?」
『一人デ、ゴハン。ワタシ、慣れテル。』
彼女は首を横に振りながら、私の問い掛けにそう答える。
ここに来るまで、ずっと一人やったんか。
私は慎重に言葉を選び、説得を続ける。
初めて来た場所で誰とも打ち解けんとか、寂しいに決まっとる。
あ「私、もっと鈴原さんの事で聞きたい事あるんや。
やけん、一緒に食べよ?」
こういう時は、素直に言葉をぶつけた方が良い。
九州人として自分の中で根付いていた教訓が、
まさかここで出てくるとは。
彼女はぱあっと笑顔になり、大きく頷いた。
少し待ってて貰い、それぞれ弁当箱を持ってくる。
私は自分の席の椅子も持ってきた。
そこで、気付いた事が。
あ「弁当、用意しないの?」
『…持って、ナイ。』
そういう事か。
弁当を持ってきてなかったから、周りの様に食べられなかったんか。
稲「…はい。」
途端、稲野ちゃんが蓋を開けた弁当を鈴原さんに差し出した。
稲「まだ食ってねえから。好きなの取ってよ。」
私も、真似さして貰うか。
あ「…私のも、好きなだけ取って良いけん。」
『…貴方達ガ食べる分、無くナル。』
稲「良いよ、その位。ね、ALTO君。」
あ「うん。」
『…Merci!貴方達、優シイ!』
彼の振りに軽く頷くと、またも明るい表情を取り戻した。
どうやらこっちが素みたいやな。
二つの弁当箱を三人でつつき合いながら、会話をする。
あ「フランス語以外で話せる言葉ってある?」
『英語ハ、ちょっとダケ。でも、日本語ハ短イ言葉しか話せナイ。』
ちょっとって事は挨拶程度って事なんやろな。
稲「親とは日本語で話してなかったの?」
『…Oui.』
何となく、そんな予想は付いていた。
そこで私は、ふとこんな事を思い付いた。
あ「じゃあ、私らが日本語を教えてあげる。」
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螢羅(K-Ra)(プロフ) - 緑月翡翠さん» いつもありがとうございます!フランス語を取り入れるのは初めてだったのですが、書いていたら楽しくて楽しくて…!毎日更新、出来れば良いんですけどねえ…。貴重なご意見ありがとうございます! (2017年4月20日 7時) (レス) id: 575549c323 (このIDを非表示/違反報告)
緑月翡翠(プロフ) - 完結おめでとうございます!フランスや花言葉は私も大好きで、とても良かったです…!読者としては毎日更新が嬉しいのですが、ご多忙なようなので時間があれば、という形がいいと思います。次作も楽しみにしています!長文失礼しましたm(__)m (2017年4月20日 6時) (携帯から) (レス) id: b835eb55b1 (このIDを非表示/違反報告)
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