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9ページ From:私 ページ10

ご飯を食べ終わり、空の弁当箱を鞄に戻す。
スナザメ君のラジオ放送も、終盤を迎えていた。
ス「えー、そろそろこのラジオもエンディングのお時間となりました。
むつー先生、如何でしたでしょうか?」
む「取り敢えず話したい事は全部、時間内に話せた!
質問がある人は、他の担当の先生に訊くか俺に直接訊きに来てね。
俺は基本的にピーチ棟にいるから。」
ス「ありがとうございました。
では本日のJASMINE.jpは、ブンブン先生の歌う
[GET MY FUTURE]を聴きながらお別れです。
それでは皆さん、また明日。」
む「ばいばーい!」
普段の落ち着いたブンブン先生からは
想像出来ない程の軽やかな歌声が、学校中に響き渡った。

少し後の休み時間。
テ「剣持さんは、林間学校どうするの?」
『どうしようかな。まだちょっと決めかねてる。
テラゾー君は?』
テ「俺もまだ決めてない。二年の友達次第かな。」
『それってpoez君の事?』
テ「あら、知ってたんだ。」
特に驚く様子も無く、端的にそう返してくるテラゾー君。
『さっきちょっと会ってね。
朝に描いてたイラストの事も言っちゃったけど良かった?』
テ「うん。まだ決定した訳じゃないしね。」
今日の放課後の生徒会の集まりの時に見せてみるって言ってたよね。
『何の行事に使うの?』
テ「それはまだ内緒。まあすぐに分かるよ。」
彼はそう言いながら悪戯っぽく笑った。

その日の放課後。
手芸部の教室に着いて席に座ると、必要な資料や材料を鞄から取り出す。
今日の課題はハンカチ。
そう言えば小学生の時に、ハンカチの右下の隅に
好きな人のイニシャルを赤い糸で縫い付けて
肌身離さず持っていると、想いが叶うと言うおまじないが流行ったな。
私はその類いの話は一切信じなかったけど。
それが本当だとしても私には必要無いだろう。
想いはもう叶っているのだから。
今だって、縫っている時に想うのは彼…やんわり先生の事。
持って来ていたワッペンを手頃な大きさの布地に重ねて縫い付けていく。
イニシャルの代わりに使っているそれは、やはり黒猫を描いた物。
澄ました様な凛とした表情が、
どこか彼らしくて衝動的に買ってしまった物だ。
高鳴る鼓動に邪魔されながらも、何とかハンカチを縫い上げた。

完成させたハンカチをブレザーのポケットに
仕舞ってから、自分の教室に戻る。
そこで待ってくれている筈の彼に会う為に。
逸る気持ちを抑えながら、ドアを開ける。
でも、そこには。
『…あれ?』
彼の姿は、どこにも無かった。

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作者名:螢羅(K-Ra) | 作者ホームページ:なし  
作成日時:2018年2月19日 21時

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