[や.ん.わ.り]Forbidden fruit is sweetest.[学パロ/実.況.者] (ページ3)

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2ページ　From:俺ページ3

次の日の朝早くに、校舎をくぐって職員室のドアを開ける。
や「おはようございます。」
その人数分の声が返ってくるのを聞きながら、俺も自分の机に荷物を置く。
机に立て掛けているファイルから今日使う分のプリントを手に取ると、
クラス毎に必要な枚数分だけプリントアウトしに室内の印刷機に向かう。
先にその作業をしていたブンブン先生の後ろに
立って順番を待っていると、彼がこちらに向き直ってこう話してきた。
ブ「あ、やんわり先生も使われますか？」
や「はい。でも急がなくて良いですよ。
一クラスだけでもかなりの枚数が必要になるんで。」
ブ「ああいえ、もう少しで終わりますから。」
高めの澄んだ聞きやすい声を持ったブンブン先生は、
優しげな笑顔のままそう返すと体を印刷機に戻した。
言葉通り印刷が終了した様で、場所を譲って貰う。
必要枚数を入力し、その作業を始めた。

数分で終わらせ、自分の机に戻って椅子を引いて腰掛ける。
別のファイルに綴じ直して鞄から空いた時間に読む小説と
コーヒーが入った水筒を取り出すと、
小説のページに挟み込まれた栞を手に取って見つめる。
…理華さん。
暫くそうしていると隣から、
ゆったりとした低音ボイスが俺に話し掛けてきた。
と「あら、可愛らしい栞ですね。
誰かからの贈り物ですか？どっかで買うた物やないみたいやけど。」
や「良く分かりましたね。」
と「その栞を見ながらずっと嬉しそうにしてはったから。」
流石、towaco先生は鋭い。
と言うか、顔に出てたのか。
や「ちょっと前の読書強化週間の時に
俺のクラスの生徒が作ってきてくれたんです。」
急ごしらえの嘘だけど、誤魔化せただろうか。
栞の表面には送り主の名前が割りかし大きく
書かれている為、裏側の黒猫だけを見せる。
ただでさえ鋭い彼にこんな嘘を吐くのは
恐ろしく危険であろう事は、俺が一番良く分かっている。
と「私と違ってやんわり先生は優しいから、
そうやって贈り物を貰えるんかも知れんのですね。」
彼がそう言ったのは真意を見据えているからか、それとも。
…いや、深読みは止めておこう。
栞を小説の元のページに挟み直し、
鞄に仕舞って背後の個人用ロッカーに入れた。
向き直ってから水筒を開けて付属のコップにコーヒーを注ぐと、
ゴクリと喉を鳴らして一口飲んだ。
隣の彼も、何かを飲んでいる様だ。
や「お、towaco先生もコーヒーですか？」
と「いえ、醤油です。」
彼のその淡々とした返しに、俺は反射的に噴き出し掛けてしまった。