36ページ From:私 ページ37
やんわり先生が来るまで時間を潰そうと、
小説を取りにバンガローへ向かう。
彼もお気に入りだと言う、夢の中を歩く少女が主人公の小説。
<あなたの夢に私はいない>か。
テラスに着くと、そのサブタイトルを指でなぞってから本を開いた。
と、後ろから誰かに話し掛けられた。
「ねぇ、剣持さん。」
『え、…何?』
栞を挿んでからそちらを向くと、
先程のヒソヒソ声の持ち主である女子二人がいた。
「剣持さんって、やんわり先生とどんな関係なの?」
一人がそう訊いてきた時は内心驚いたが、顔に出さずに答える。
『普通に、仲の良い先生だよ。』
「本当?何か距離近い気がしたんだけど。」
もう一人が訊く。そして、こう付け加えた。
「まさか、内申点を上げて貰おうとか思ってない?」
『そんな事…。』
「昨日の夜二人でいる所見たんだけど、
あれってもしかして色仕掛け?」
『何でそんな発想になるの。
誰かと見間違えたんじゃない?
私はお風呂の後はずっとバンガローにいたし。
その後も先生には会ってないよ。』
アリバイを組み立てる内に、彼に対して申し訳無く思ってきてしまう。
「そっか。ごめんね、疑っちゃって。」
『良いよ、私は気にしてないから。』
重苦しい空気の中での会話の後に、彼女達がやっと離れていった。
もう一度本を広げ、中の栞に目を落とす。
お揃いで作った物の片割れだ。
『先生。私はいつまで嘘を吐いていれば良いんですか…?』
栞にそっと触れ、一つ呟いた。
数分経っても、先生は来なくて。
仕方無くバンガローに戻ると、そこからスナザメ君が出てきた。
「あ、剣持さん。
その…、今から時間ありますか?」
『え…。うん、あるよ。』
「えっと、次のオリエンテーションまで
ちょっと散策しませんか?」
本当はすぐにでもやんわり先生に
会いたかったんだけど、彼も忙しいだろうしね。
『良いよ。どこに行くの?』
そう返すと、彼はどこか嬉しそうに笑って言った。
「そこの峠を下ってみたいなって思ってたんです。
敷地内だし道も分かりやすいから、時間内には戻って来られますよ。」
『楽しそうだね。何か冒険みたい。
でも、私で良いの?』
「はい。何て言うか…、剣持さんは勉強を頑張っておられるので、
根を詰めてないかなって心配だったんです。
それで、息抜きになれば良いなって思って。」
『スナザメ君って優しいね。心配してくれてありがとう。
じゃあ準備してくるからちょっと待っててね。』
そう言うと、彼は何故か顔を赤くしてしまった。
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