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四十二通目 ページ43

〜〜〜はたさこ〜〜〜
重ねている間も、時計の音が鳴り止まない。
それが俺の心臓の音と重なって聞こえるのは、きっと偶然だろう。
ドアを挟んだ廊下側から視線を感じる。
目だけをそちらに向けると、ドアの窓枠から
とりっぴぃ君がこちらを見つめていた。
彼は何故か俺を見て、にこりと笑っていた。
ひまわりの様に、とても嬉しそうに。
目線を宮村さんの方に戻し、
瞼を閉じている彼女に倣ってゆっくりと目を閉じる。
そうすると、最初は大きかった足音が小さくなっていった。

そっと、唇を離す。
同時に彼女は目を見開き顔を真っ赤にして俺を見た。
文化祭の帰りの時と同じ様に、俺の胸に額を付ける。
大きな違いは、その表情が悲しげで無い事だろうか。
は「こ…こんな事してごめんなさい。
俺達付き合ってすら無いのに…。」
拙い。宮村さんのトラウマを抉ってしまったか。
『何だろう…。上手く言えないけど、
私、こんなキス初めてだ…。』
彼女の言葉が、ポツリポツリと紡がれていく。
『私ね、元彼とはキスした事無かったんだ。
だから、初キスはとりっぴぃ君に取られちゃった。』
その言葉に、俺の心が抉られる。
何も今言わなくても。
『でもね…。それよりも、今のキスの方が嬉しかった。
何で、かな…?はたさこ君が優しいから…?』
震えているけど、気丈でいて甘い声。
今言わなきゃ、タイミングが無くなってしまうよね。
は「宮村さん。俺は宮村さんの元彼さんの代わりになるとは言いません。
元彼さんに付けられた傷を俺が癒せるとも思えません。
今の俺じゃ、宮村さんの側にいる事しか出来ませんから。
それでも、宮村さんを守る事は出来ます。だから…。」
続きの言葉が、どうしても出ない。
喉に引っ掛かる様に、口の中で留まってしまう。
不自然に止まってしまったのを察したのか、彼女は俺を見上げてきた。
普通に見ている筈なのに、それが俺に対しての上目遣いに思えてくる。
顔を見てしまうと、更に喉の奥に抑えられてしまうその一言。
本当に、一言だけなのに。
彼女はまた、穏やかにふわりと笑い掛けてきた。
『…大丈夫。落ち着いて。』
何度か深呼吸して、やっと。
は「………俺と。」
自分でも驚く程すぐに。
は「付き合って、下さい。」
続きが…言えた。

まっすぐ彼女を見据えて、答えを待つ。
胸の鼓動が、一段と大きく動いた。
『…前に友達に言われた事を思い出しちゃった。
うん。はたさこ君なら、一緒にいて欲しいって思えるかも。』
…それって、まさか。

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螢羅(K-Ra)(プロフ) - 夜月さん» メッセージありがとうございます!設定だけで言えば王道だとは思うんですが、それ故にどう変化を付けるのかが難しい作品でもありました。書いていて楽しかったですけどね!2ですね!了解しました! (2018年2月6日 13時) (レス) id: e598710c3a (このIDを非表示/違反報告)
夜月 - 突然のメッセージ失礼致します。完結おめでとうございます!大好きなはたさこさんのお話で毎回ニヤニヤしながら二人の恋路を見ていましたwもう青春って素晴らしいです!!www次の作品のアンケですが2がいいです!お忙しいとは思いますが体調にはお気をつけください (2018年2月6日 13時) (レス) id: 37437532ec (このIDを非表示/違反報告)
螢羅(K-Ra)(プロフ) - 心音さん» わー、ありがとう!結構多いから、自分のペースでゆっくり読んでね!世界観が繋がってるのとそうでないのがそれぞれあるから、中身分からないまま一気に読んだらこんがらがると思う…。私もちょっとこんがらがったw1か3了解! (2018年2月5日 23時) (レス) id: e598710c3a (このIDを非表示/違反報告)
心音(プロフ) - 完結おめでとう!いまだに読めてない作品とかあるから今読んでる!次回は1か3!!次も頑張ってね! (2018年2月5日 22時) (レス) id: e09554575b (このIDを非表示/違反報告)
螢羅(K-Ra)(プロフ) - Rimmさん» コメントありがとうございます!地味に3銃士勢揃いは狙ってましたwうばまろさんのお話は、彼は年上と恋愛させてみたいなと言う思い付きから始めてみたものです。やんわりさん了解しました! (2018年2月5日 21時) (レス) id: e598710c3a (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:螢羅(K-Ra) | 作者ホームページ:なし  
作成日時:2017年7月7日 11時

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