捌 ページ8
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最終選別は着々と進み、遂には最終日を迎えていた。
毎年大半の受験者を失い、時には合格者無しと云うのも在ったそうだから、どんなものかと思ったけれど、案外簡単だった。
鱗滝さんが“雑魚鬼”と云っていたのも頷ける。
其れにしても、此の数日間で鬼の気配が全くと云って善い程無くなった。
恐らく、錆兎君が大暴れでもしているのだろう。彼はそう云う性格だから。
しかし、彼は無駄な動きこそ無いが、其処迄鬼の頸を斬っていると刀が危うい。
あの刀は鱗滝さんから借りた日輪刀だが、何分古びているからきっと此れ以上は耐えられない。
刀が折れては彼でも手も足も出ない。
助けに行かなくては。
「鱗滝いいぃぃ!!!! またお前の弟子を喰ってやるぞぉぉお!!!!!!!!」
そんな地響きの様な声が聞こえて、其の方向へ走る。
少し開けた処へ出ると、其処には異形の鬼と折れた刀を持っている錆兎君が居た。
(矢っ張り……)
彼は其れでも尚、手鬼に向かわんとし、挙句掴まれてしまった。
仕方がない。
「弐ノ型 月下獸」
虎の爪の様な一撃で鬼の伸びた手を斬り、錆兎君を救い出す。
そろそろ私の刀も限界が近かったので、錆兎君を抱えて全力で逃げた。
錆兎君、君重いよ。
もやしの様な私には荷が重いよ、色んな意味でね。
「悪い、A。助かった」
「どう致しまして。怪我は無いかい?」
「ああ、無事だ。刀は折れてしまったが」
「今日で終わりだから、大丈夫さ」
会場に近い処まで逃げ切り、木の上まで登って夜明けを待つ。
錆兎君の話に拠ると、義勇君は別れた後直ぐに負傷し、今は他の受験者に任せているそうだ。
彼は少し臆病な処が在るし、実力も錆兎君と比べては劣っていると云える。
けれど、矢っ張り仲間であり友人だから、心配だったのだ。
「そういえば、何故あそこにいたんだ?」
「嗚呼、それはね、もう直ぐ君の刀が折れる頃かと思って一日中君を探し回っていたのさ」
「……予想していたのか?」
「うん。他にも色々な予想は立てていたけれど、此れが一番高確率だったんだ」
「お前、つくづく俺の想定の範疇を超えてくるな。驚いたぞ」
「まァ……ね」
君達を失いたくはないから。
最終選別は終わり、私達は元の会場に戻っていた。
死んでしまった受験者は、錆兎君の活躍あって居ないらしい。
合格者の中には、勿論義勇君も居る。
彼は私達と会うと、泣き出してしまった。
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サブとバラ(プロフ) - 戯言さん» コメントありがとうございます!本当にお待たせいたしました。毎日とはいきませんが、更新停止にならないよう、少しずつ連載していきますので、どうかこれからも応援よろしくお願いします! (2021年4月1日 18時) (レス) id: 4ca3bc2d2a (このIDを非表示/違反報告)
戯言(プロフ) - 待ってました!!更新ありがとうございます!!! (2021年4月1日 18時) (レス) id: 2a27d057e9 (このIDを非表示/違反報告)
サブとバラ(プロフ) - Kuro4141さん» ありがとうございます!皆さんをお待たせしたくせして受験落ちるわけにはいきません……!イイとこ受かってお祝いの更新します! (2020年10月17日 22時) (レス) id: 89f5f989ea (このIDを非表示/違反報告)
Kuro4141(プロフ) - 気長にお待ちしております!受験頑張って下さい! (2020年10月17日 19時) (レス) id: 8db3a541f6 (このIDを非表示/違反報告)
常田(プロフ) - リヴさん» またまたリヴ様!! こうしてコメントを下さるのは何度目のことか……!! 嬉しい限りでございます!!!!! ありがとう!! (2020年4月26日 12時) (レス) id: 89f5f989ea (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:サブとバラ x他1人 | 作成日時:2019年10月19日 22時