弐 ページ2
*
「ッ!!」
最近、母親が全く帰ってこない。普通なら週に一度、必ず帰るのに。
これは絶好の機会だ、と思い、屋敷の天井から麻縄を吊るして首に掛けた。
矢っ張り、首吊りは痛いし苦しい。
何度目か分からない程首を吊ってきたが、何時も同じ結果に成る。
麻縄が擦れた痕の残る首を撫ぜると、ひりひりした。
「ね、ねーちゃん何してるの?」
聞き覚えの在る声がして、発生源を探すと、其処には実弥さんと同じ目をした男の子が居た。彼は実弥さんの弟、不死川玄弥君だ。
きっと、何かしらの用が有ったが返事をしない私の様子を見る為、勝手に戸を開けて入ってきたのだろう。
「……玄弥君か。何って、自害だよ、自害。首を吊って死のうとしたのさ。まァ、今回も失敗に終わったのだけれどね」
「!? 死んじゃやだよ!」
そう云って私に抱き着く彼。
私の服に頭をぐりぐりと押し付けているから、きっと泣いてしまったのだろう。
心優しい彼に、少しでも謝罪の意を込めて頭をゆっくり撫でた。
「そうだ。君は私に何か用事が有るんじゃないかい?」
「あっ」
忘れていたのか。
涙でぐちゃぐちゃの顔が、何も無かったかの様に呆けていて面白い。
不覚にも笑ってしまった。
「えっと……、今日は父さんが居ない日だから、ねーちゃんもご飯一緒にどうかって。母さんとにーちゃんが」
嗚呼、つくづく彼等は度が過ぎる程に優しい。
断りたいけれど、其れでは申し訳ないし、私の良心も傷付く。
「……では、お言葉に甘えさせて貰うよ。有難う、玄弥君」
「やった! じゃあ一緒に行こ!!」
私の手を引き、早く早く、と急かす。
でも、此の侭行くのはまずい。
「少し待っていておくれ。此処に包帯を巻かなければならないんだ」
「じゃあ、俺がやる」
「本当かい? 助かるよ」
彼はまた泣きそうに成りながらも、首に丁寧に包帯を巻いてくれた。
手首や額にも巻いてあるので、誰かさんに“包帯無駄遣い装置”と云われそうだ。
「玄弥君、お願いが有るんだ」
「?」
「私が死のうとした事を、誰にも話さないで欲しい。勿論、君のお兄さんやお母さんにもね」
彼等は国木田君や敦君とは違い、本気で心配すると思うから。
私の信条は、“清くクリーンで人に迷惑を掛けない”だからね。
彼は少し悲しそうに、答えた。
「……もうあんなことしないなら」
「じゃあ約束だね」
「うん!」
其れから私達は隣家に向かった。
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サブとバラ(プロフ) - 戯言さん» コメントありがとうございます!本当にお待たせいたしました。毎日とはいきませんが、更新停止にならないよう、少しずつ連載していきますので、どうかこれからも応援よろしくお願いします! (2021年4月1日 18時) (レス) id: 4ca3bc2d2a (このIDを非表示/違反報告)
戯言(プロフ) - 待ってました!!更新ありがとうございます!!! (2021年4月1日 18時) (レス) id: 2a27d057e9 (このIDを非表示/違反報告)
サブとバラ(プロフ) - Kuro4141さん» ありがとうございます!皆さんをお待たせしたくせして受験落ちるわけにはいきません……!イイとこ受かってお祝いの更新します! (2020年10月17日 22時) (レス) id: 89f5f989ea (このIDを非表示/違反報告)
Kuro4141(プロフ) - 気長にお待ちしております!受験頑張って下さい! (2020年10月17日 19時) (レス) id: 8db3a541f6 (このIDを非表示/違反報告)
常田(プロフ) - リヴさん» またまたリヴ様!! こうしてコメントを下さるのは何度目のことか……!! 嬉しい限りでございます!!!!! ありがとう!! (2020年4月26日 12時) (レス) id: 89f5f989ea (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:サブとバラ x他1人 | 作成日時:2019年10月19日 22時