背中合わせの… ページ1
「ただいま。」
「おかえり。」
今日も帰りの遅い恋人を、彼の自宅に押しかけて迎え入れる
「お疲れ様。」
「うん、疲れたよぉー。」
鞄を持ったまま、ポスンと胸に飛び込んでくるから
ギュッと抱き止めて、体をゆらゆらと揺らせば
「んー、癒されるぅ…」
って、目を閉じて幸せそうに抱きついてくる
堪らなくなって可愛い唇にキスを落とした
「夕食は？」
「現場で弁当食った。太輔は？」
「俺も済ませて来たよ。」
「そっか。今日は早かったの？」
「んー、ほぼ定時かな。通し稽古で微調整してる段階だからね。煮詰まった稽古はしてないよ。」
「そっか。順調って事だな。」
まるで自分の事みたいに嬉しそうに笑ってくれるから、俺もいつも以上に嬉しくなる
「お風呂沸かしてあるからさ、入っておいでよ。」
「ん。あんがと。」
タオルや着替えを準備しながら、風呂場へと向かう恋人を見送る
正直、俺も連日の稽古で疲れていない訳ではない
自宅でゆっくりする方がいいんだろうけれど、それでもここに来て彼の世話を焼くのは
彼の笑顔に癒されてる自分がいるから
そして…
初めての映画
初めての主演
初めての…猫(笑)
きっと俺以上に疲れているであろう恋人に出来る事はしてあげたいと思うから
「ふぅ〜、気持ち良かったぁ。」
「疲れ取れた？」
「おう。」
「飲む？」
「んー、だな。」
「んふふ。つまみ、買っといたよ。」
「おっ、さすが出来る男は違うねぇ。」
冷蔵庫からビールを2本と最近彼がハマってる生ハムとチーズを取り出し、テーブルに並べる
プシューと心地よい音と共に、開けられるプルトップ
「おつかれ〜。」
嬉しそうにビールを差し出してくるから、同じようにして小さく乾杯した
「ぷはぁ、やっぱ風呂上がりのビールは美味いなぁ！」
やってる事はおっさんなのに、可愛く見えて仕方がないんだから、俺も重症だ
いつも通り、今日あった出来事を話しながら晩酌した後は…
「さてと…」
「やりますか。」
「ですね。」
ソファに背中合わせに座って、台本チェック
俺は舞台の、彼は映画の
背中合わせを始めたのは彼の方
お互い違う事してるけど、背中の温もりが存在を感じさせてリラックスできるみたい
俺がいるから大丈夫って言って貰ってる気がして
セリフだってどんどん入ってくるから不思議なんだよな
.
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作者名：MISA
| 作成日時：2018年3月2日 10時
