白い光の中で ページ27
撮影の合間
ほんの少しの待ち時間
楽屋に戻る程でもなくて、何気なく…
真っ白い教会のベンチに座った
目の前の大きな十字架が神聖な雰囲気を醸し出し、スタッフ達の大きな声や機材を動かす大きな音が、次第に遠ざかっていく
ふぅ…、と吐き出した息に押されるように、ベンチに深く凭れ掛かる
いつか俺も…愛する人と将来を誓い合う日が来るんだろうか
そんな感傷に浸っていると、目の前にふと影が過った
「…藤ヶ谷。」
「ここ良い?」
返事をする前に俺の隣に座り始める藤ヶ谷をぼんやりと眺めていた
「どした?…疲れちゃった?」
「いや…別に…」
こうして藤ヶ谷が俺の隣に来る事は、珍しい事ではない
けど、何か…
伝えたい事がある時や、悩みを抱えている時にふと…こうして俺の所にやってくる
本人が自覚しているかどうかは分からないけど
お互いに、何も言わないままボーっと十字架を見つめている
でも気まずさなんかはなくて、こうした時間が俺の癒しの時間でもあるんだ
「いつか…俺達も、結婚式とかする日が来るのかなぁ。」
藤ヶ谷が呟く
「ふふっ。俺も…さっき同じ事考えてた。」
「そうなの?」
「うん。」
ぼそぼそと、2人だけにしか届かない声で会話は続く
「…そういう人…いるの?」
「いない…のかなぁ…」
「あはは。何だそれ。」
「ずっと隣にいて、幸せにしたり、幸せにして貰ったり…そういう人と巡り会いたいなって思うけど…」
「うん。」
「俺は今も…北山の傍にいると幸せだし、北山が俺の隣で幸せを感じてくれたらいいなって思ってるし…。」
俺の真似をするみたいに、ベンチにズルズルと凭れ掛かって、天井まで続くステンドグラスを眺めながら、藤ヶ谷は話し続ける
「……それは…他のメンバーだってそうだろ?」
「うん。多分ね。でも…」
「…」
「北山は特別な気がする。」
どうして突然そんな事を藤ヶ谷が言い出したのか…
藤ヶ谷が言う言葉の意味が何なのか…
聞こうとした時に、撮影再開の声が掛かる
「…行こっか。」
「…うん。」
教会の扉へと俺に背を向けて歩く藤ヶ谷の、手を引いて聞く事だって出来たけれど
伸ばしかけた腕を止めて、そっと下ろした
『だからずっと、俺の傍にいてよ』
藤ヶ谷の背中越しに
藤ヶ谷の優しい声が聞こえたから…
END
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作者名:MISA | 作成日時:2016年5月5日 19時