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魘されながら俺を呼ぶ北山の声に、俺は結局一睡も出来なかった

窓から差し込む光は、朝の訪れを知らせる

明るい日差しに浮かぶ北山の頬は、昨日の青白く火照ったものとは違って、ほのかなピンクに変わっていた





「良かった。下がってる。」





首筋に手を当てて熱を測ると、ゆっくりと北山の目が開いた





「おはよ。」

「ん………おは、よ…」

「気分、どう?」





顔を覗き込むと、ゆらゆらと瞳を揺らして俺を探す

そして俺を見付けると穏やかに微笑んで、ゆっくり息を吐き出した





「なんか、大分楽になった。」

「昨日は熱高かったからな。見てるこっちの方が辛くなるくらいだった。」

「ごめんな…。あんま…よく覚えてないんだけどさ…、藤ヶ谷、ずっと看ててくれたんだよ…な…?」





躊躇いがちに聞かれる…

昨日の事…全部覚えてない事にしたいってシグナルなのか?





「……どこまで覚えてる?」

「え…?…えっと……スープ…作ってくれた事とか…薬…飲んだ事とか…」

「……そっか…。」





俺が抱き締めた事は?…とは聞けなかった





「藤ヶ谷、ありがとう。色々迷惑かけてごめんな。俺もう大丈夫だから…」

「………北山…、俺はお前の傍にいない方が良いか?」

「え…?」

「もしも俺の想いが、逆に北山を苦しめてるなら…俺…北山の事、諦めるよ。」

「藤ヶ谷…?」

「北山の事が…大好きで…大切だから、ちゃんと諦める。」

「…」





北山の唇が無音のまま、何度も開く

けれど、やがてそれはキュッと固く結ばれて、北山は俯いてしまった





きっとそれが答え…





「……もう、熱も大分下がったし、一人でも、大丈夫かな?」

「…」

「…俺、もう帰るね。…病み上がりなんだから、まだ無理しちゃダメだよ?」

「…」

「もし、辛かったら渉に連絡して……俺からも…お願いしておくからさ。」

「…」





北山は何も発しない

俯いたまま、俺の言葉をじっと聞いてるだけだ





「…じゃあ………また明日、ね。」





後ろ髪を引かれるような思いだったけれど、俺がここにいる意味はない

意を決して立ち上がろうとした時、後ろからクイッと引っ張られた





「…え…?」

「…」





俺の上着を握ったまま、俯く北山





「……北山?」

「…」

「ねぇ…」

「…」

「………どうして欲しい…?」





硬く握られた手を、そっと温もりで包む





「北山…?」

「……傍にいて…欲しい」






.

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作者名:MISA | 作成日時:2017年12月7日 13時

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