クズ野郎かく語りき ページ4
中原中也。口の中で呟いて噛み砕く。ナカナカした不思議な名前は、ひどくしっくりとあの顔に似合っていた。
放課後、好奇心だけで軽音部の部室へ向かい、ドアの向こうから漏れる陽の気に当てられて早々に教室へ舞い戻った。それからクラスのやつのTwitterを眺め、あいつの名前が「中原中也」であることを知った。同学年のC組。俺はD組なので隣である。
あれだけうまけりゃインディーズにでも入っているのかと思ったが、彼奴のツイッターはほぼライブの告知botとなっていた。日常ツイートは去年の春で止まっている。
惰性でうだうだとタイムラインを眺めていると、いつのまにか部活動終了の放送が入った。見ればもう五時半である。このままだと一般教室は鍵が閉められてしまうので、早いところ出ないと閉じ込められてしまう。
カバンを引っ掴んで、聞いていたナンバーガールを止める。ヘッドフォンをカバンに押し込んでから教室を出た。
大人しく帰ろうと階段を降りたところで、校門の向こうに例の軽音部の姿が見えた。四人一緒にいる辺り、仲は良いらしい。件の中原は四人の中で一番背が低いようで、散々頭を叩かれたりしている。
悔しくないのだろうか、とも思ったが、あの手の陽キャはそれも全部許容してしまうくらい心が広い。考えるのをやめた。
僕も早いところ帰ろうと下駄箱から靴を出したところで、ふと帰る中原の姿が思い出された。
_彼奴、ギターケース持ってなかったな。
と、なれば、例の真っ赤なギターは部室だろう。そう考え始めた途端自分の卑屈な部分がひょっこり顔を出し、今なら部室に行ってギターを触れるかもなんて囁き始める。
無論従った。僕は性格が悪いのだ。
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紅生姜 - 面白かったです!続きが気になります。 (2019年7月14日 16時) (レス) id: f997d5590d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:麦藁 きたる | 作成日時:2019年4月17日 18時