第28.5 ページ34
携帯電話を閉じた太宰が笑う
それは見る人によっては美しく、見る人にとっては嫌みたらしくて仕方がない笑顔だった
「約束、出来ちゃいました」
にっこりと口角を釣り上げる太宰
その裏に隠された真意を読み解いてやろうと睨んだが、たちまちその目は違う方を向く
軽い職場の喧騒の中、誰に気付かれることも無い太宰との会話
乱歩は思う
失敗だった、と
まさかこうも早く実行に移すとは思っていなかった
しかし太宰はそう言う奴だ
気づかなかった自分にも負があるだろう
「Aさん、紅茶お好きみたいですね」
谷崎と話す国木田を眺めながら、太宰が言う
「そうだよ。Aは紅茶派だもの」
机上のプランターに水をやる賢治君を眺めながら、そう言い返す
横目に見た太宰の目が微かに煌めいた
「ふふっ、Aさんとは気が合いそうだ」
いつの間にか名前で呼んでいる
Aを下の名前で呼んでいたのは自分だけだったのに、これでは特別じゃないじゃないか
拗ねて窓の外を見てみれば、窓枠にとまっていた鴉と目が合った
ガァ、と鳴きながら、鴉は飛び立って行く
真っ黒い羽根を羽ばたかせる様は、さながら悪魔のようだった
人の顔を被った、人を堕落させる悪魔＿
「乱歩さん」
太宰の自信気な声
それもやはり喧騒の前では、自分にしか聞こえない特別な言葉のようだ
「私、フラれた事ないんですよ」
太宰の自信
味方ならばそれは喜ぶべきことの筈だが、敵に回すと恐怖でしかない
席を立ち、誰にも気付かれないような足音で探偵社から出て行く太宰
＿乱歩は静かに舌打ちをした
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 255人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「文豪ストレイドッグス」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
赤井司(�洩襦��瑛�) - イラスト凄い！ (2018年3月6日 18時) (
レス) id: 32189bcc43 (このIDを非表示/違反報告)
文拡月(プロフ) - とても面白い作品に出会えて幸せです！今さらなのですが、お疲れ様でした。作品を完結させるのは大変なことなので、尊敬します！ (2017年8月14日 17時) (レス) id: f10ef5b597 (このIDを非表示/違反報告)
姫歌(プロフ) - お疲れ様でした(今頃)太宰さんバージョンも…みたい…なぁ…？ (2017年7月10日 18時) (レス) id: 8973e64cc8 (このIDを非表示/違反報告)
読む専門の人 - 質問に答えていただきありがとうございました。 (2016年12月25日 4時) (レス) id: 256838e740 (このIDを非表示/違反報告)
リア(プロフ) - 察したのか。私だと察したのか、脳内に直接語りかけただけで。(続編or新作希望早く出せや) (2016年12月24日 1時) (レス) id: 215c2b096b (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：來麦 | 作成日時：2016年6月14日 6時
