筆に想いを (ページ1)

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「ねぇねぇ！ねぇ！ミツ！！」

ばしばしと俺の事を叩く玉ちゃん。
昔と違って筋肉もりもりなんだから叩いたら痛いんだよ！

「いててて、何、玉ちゃんっ」

「カウコンでさ、充電期間終わったって、ライブやるって」

「んー、そうね、言ってたね」

「んでね、俺、ガヤと行こうってなったの！」

「はぁ！？藤ヶ谷！？何で！？俺も行きたいのに！」

俺のブログにアップする為の書をしたためようと、筆を握る手から真っ白い半紙にコロリと墨を含んだ筆が転がった。

「ぬぁっ！」

「んでね、んでね！」

興奮状態の玉ちゃんは1枚ダメにしてしまった半紙の事など、知らんぷりで俺に必死にアピールする。
なぜに恋人がグループ1のセクシーキングとライブデートをするのを聞かにゃならんのだ！

「俺も行きたいのにって言ってんのに！」

「行けばいいじゃん！てか行くべきっしょ！！ニカとスケジュール合わせなよ！俺とガヤみたいに！」

はぁぁぁ！？

お前ら合わせたんかい！
スケジュール空いててそこで席の空きがあれば入れてもらう感じじゃねぇの！？

そもそもなぁ！
俺！俺は！？
俺だってあの先輩方には相当世話になったんだ！
憧れもそりゃもちろんあるし、ライブともなれば勉強という名目プラス純粋にカッコイイあの人達をみたい！ってなる事くらい分かるでしょーが！
なんならお前らだってそうだろ！？

「あー楽しみだなー！」

「そうね、楽しみね」

もうここまで興奮している恋人に何を言っても無駄な事を知っている俺は、新しい半紙をセットし、筆に再度墨を含ませた。

「あ！ここからが本題！」

「何だよ」

「ミツ、うちわの文字書いて！」

「はぁ！？」

「俺もファンサ貰いたい」

「誰に…」

「亀梨くん」

「………俺の」
「ミツのファンサじゃだめ」

くそぅ……
食い気味に言うね、玉ちゃん
俺だってドーム埋めるくらいのグループの1員だからね！？
忘れてない！？

「うちわにね、亀って漢字でかっこよく！目立つと思わない？ファンの子、絶対色とりどりのうちわだからさ、逆に！ね！？」

「………」

ポタリ、筆に含ませた墨がまた真っ白い半紙に滴った。