【明治東亰恋伽】本と、剣と、ハイカラと。【愛され】

浪漫.9 ページ10

そんなこんなで小泉からAの服を選んで欲しいという頼まれを受けた川上と、偶然居合わせた泉は、服屋に来ていた。

｢なんで僕まで…｣といやいや連れてこられた泉だったが、今となっては随分驚いた顔をしている。


まぁそれもそのはず。

自分でも”我ながら中々綺麗なのでは？”と自慢できてしまいそうな程、Aの袴姿は美人だった。

ヘアバンド代わりにしていたリボンをほどいて、落ち着いた印象になったのもあるだろう。

ちなみにそのヘアバンド代わりにしていたリボンは、髪の右側を三つ編みに結ってそこで使っている。

上から下まで、庶民一般人と来ているものは変わらないものの、何でか華やかに見える。



川｢こりゃびっくりだ。女ってのは化けるもんだな…。｣

｢素直に可愛いって言ってくださいよ。ね、鏡花さん。｣

泉｢ッ僕に話を振るな。べ、別に…普通じゃないの？｣

川｢ま、この川上音二郎が選んだからには、綺麗になってもらわなくちゃ困るぜほんと。｣

｢つまり？｣

川｢はっはーん。A、お前中々のやり手だな。綺麗だよ綺麗。似合ってる。｣

｢ありがとうございます。｣



クスクスと笑って、｢綺麗だ｣と言ってもらえたことを喜ぶ。

泉も、ちょっと顔を赤く染めていた辺り Aの服は変ではないのだろう。


藤田に貰ったお金で着物一色を買い、三人で店から出た。

なんだか景色が明るく見えて、さっきよりも鮮明に濃くはっきりしている。









｢…あぁ、ほんと。あの場所より、よっぽど綺麗。｣


泉｢…？ねぇ、あの場所って…｣


？｢あ、泉。川上さんも…って珍しいね、女性の連れなんて。｣




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