19話 元パパのせいで衰弱する硝子 ページ20
「硝子は人に勉強してるってことを知られるのが一番嫌。てめーだって知ってんだろ。誰にも馬鹿にされてくないって」
唯一、硝子のことを馬鹿にしないあまねにだけようやく言えたことなのだ。勉強したいって、進学したいって。それを梢はさらりとバラしに来ようとしているのだ。あまねが俺にバラした時もしっかりと口止めされたし。
気が知れない。何を考えているのか全く分からない。
「お前のこと何も知らねーけど、硝子はお前の妹だろ。庇ってやれねーのかよ」
「じゃあさ、付き合ってよ」
「は……?」
「付き合ってほしいのよ、私と。硝子が勉強してること、バラされるの嫌なんだったら条件があるってこと。どうする?」
脳が真っ白にな。ほんと、何言ってんだコイツ。
★ side あまね ★
一回体を揺すると硝子はすぐに目を覚まし、上半身を起こした。欠伸も出ない、声を出す気にもなれないのだろう。そして寝不足がちだと思う、硝子の目の下には、痛々しい紫色をしたクマがあった。
「お姉ちゃん、朝食作るから顔洗っておいで」
「んん」
喉で低い返事をして、のそのそと布団から出る。硝子は一階のリビング、参考書が散らばる絨毯の上で毎日寝ている。正確に言えば寝てしまう。トイレとこのリビングを往復するだけの毎日。硝子が決めたことだから否定はしたくない。
コンロに火をつけて、昨晩作った卵スープに水を追加する。シャンタンと塩コショウをちょっと足すだけ。節約というよりただのひもじさが目立つようにも見えるけど、今がこれで精一杯だった。
「あまね姉ちゃん」
「あ、どうした」
一度は洗面所に足を運んだ硝子が、うっすらと瞳を開けて戻ってきた。私と目を合わせながら、瞬きをひとつ。
「私ね」
「うん」
毛先が外側に跳ね、顎についたかぴかぴのよだれ。そして身長が縮んだように――、硝子の体を上から下まで見ると、いつにも増してすごい猫背と痩せた肢体に目が奪われた。
「どうしたの、硝子……?」
「私ね、塾に通うことにした」
「塾?」
「お姉ちゃんも受験だし本当は私に構ってる時間ないでしょ。バイトもあるし」
「私になら気は遣わなくていいよ、ありがとう」
「ううん」硝子は首を振り、「私、バイトすることにした。自分の塾代は自分で稼ぐ」
「え……」
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PP - そうだったんですか。お話の展開や一人一人の色んな個性や想いが丁寧に描かれていて、情景が目に浮かぶようです。何故か私の一番思いだすシーンがお母さんが盛塩をフライパンで煎るシーンです(笑)また素敵な作品楽しみにしてます。 (2016年5月19日 17時) (レス) id: e76cee042d (このIDを非表示/違反報告)
レイチェル・ハジェンズ(プロフ) - PPさん» 実はこの作品、レイチェルの家族と、片想いしてる人の家族構成をそのまま持ってきてるんですよね。内容もそれに近付けて、結構重たくしてみました。読んでくださり、ありがとうございます(*^^*) (2016年5月19日 17時) (レス) id: 3a04122313 (このIDを非表示/違反報告)
PP - 追伸☆ごめんなさい!「こんにちわ」のつもりが「こんにちわんだぞ(何の意味だよ)」と…スミマセン! (2016年5月19日 9時) (携帯から) (レス) id: 0625209047 (このIDを非表示/違反報告)
PP - こんにちわんだぞ☆毎日読み進めてましたが続きが楽しみな作品でした。3姉妹が10代にして重過ぎる事情を抱えてても明るく生きる姿に勇気をもらいました! (2016年5月19日 9時) (携帯から) (レス) id: 0625209047 (このIDを非表示/違反報告)
響稀(プロフ) - リクエストの硝子ちゃん完成しました!!サイトにてお待ちしてます! (2016年4月13日 23時) (携帯から) (レス) id: 0a116ef314 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:レイチェル・ハジェンズ | 作者ホームページ:https://twitter.com/seshiru777777
作成日時:2015年12月14日 20時