君がいなくなる前に

十 ページ12

「なぜ殺されたかは分かっていないのですか？」


黒装束の中の一人に聞かれた。私は分かりませんと答えた。


『そりゃもちろん、殺されないで生きてることが一番ですけど、でも、それでも私が殺されたのは、きっと寿命だったんだと思います』

「寿命とな？」

『心の寿命です。あの時、夜だったし暗かったけど、逃げようと思えば確かに逃げれる状況だった。
それでも逃げなかったのは、私は無意識的に嘱託殺人のような形で私の命を消すことの手伝いをしてもらったのかと思ってます』



私の友達も、お見舞いに行った時にそんなことを言っていた。その日にその友達は死んでしまったけど。



「ふむ…」

『それに、私が死ぬ事はきっと避けられなかったんです。仕方なくて、どうしようもないんです』

「生きようとは思わないのか？」

『思えません。少なくとも、今の段階では』



正直言って、やっと死ねたと思っていたのにどうしてその安らかな死を邪魔さないといけないんだ、と思っていた。
私は、私の人生においての優先順位をぐちゃぐちゃにされてしまったんだ。

それが何者によって行われたかとかはどうでもいい。

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