虎が残した傷痕３【文スト】 (ページ31)

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１３０．ページ31

牢屋に閉じ込められたAと敦。

二人の牢は向かい合った正面にある。

小さな窓から、お互いの様子がまだ見えるだけだ。

敦「出せ！くそっ！」

『扉が頑丈過ぎるっ……』

敦「このままじゃ街がっ！」

その時、聞き覚えのある声が聞こえ、敦はその声に反応する。

ル「あらぁ、ゴミ捨てのついでに見に来てみれば、いい気味だわ」

そこにいたのは、組合の元構成員のルーシィ・モード・モンゴメリだった。

『貴方は確か……』

ル「そっちのアンタは探偵社にお邪魔していらいね」

敦「頼む！ここを開けてくれ！」

ル「いーやーよ！貴方みたいな恵まれた人は大っ嫌い。

このまま街が灰になって、貴方がこのボロ人形みたいに用なしになって棄てられたらアタシの気持ちが分かるでしょうね」

敦「……君の辛さはよく分かるよ。僕だってっ」

ル「知った風な口をきかないで！

血の滲む指で、一日皿洗いしたことはある？熱した火かき棒で摂関されたことは？」

ルーシィは服の袖をまくり上げる。

ル「この傷の痛みと苦しみがどんなものか、貴方に想像できて！？」

敦「……一日目に痛むのは骨。でも一番きついのは三日目だ」

敦がめくり上げた服の下を見て、ルーシィは驚愕の表情を浮かべた。

敦の体にも、消えない傷跡があったからだ。

敦「動く度に火傷が擦れて死ぬほど痛む……僕も同じ場所にいた。

だから君の怯えも孤独もよくわかるよ。でも孤独は、僕たちを永遠に支配する王様ではなかった。

孤独は、時に消え、時に現れる、ただの朧雲だ。地上には僕たちと同じ傷を抱えた人が沢山いる。

その人達を見捨てれば、君は……君は過去の自分を見捨てることになる。

それでもいいのか？」