虎が残した傷痕【文スト】

５． ページ6

探偵社に到着し、会議室に入ると与謝野先生がいた。



与「おやAじゃないか。どこか怪我してない？」



『こんにちは与謝野先生。怪我はしていませんよ。


ところで何読んでるんですか？』



与「ここに置いてあった新聞さ。読むかい？」



『いえ、私は結構ですよ』



それにその新聞、二ヶ月前のやつですよ……とは言い出さなかった。



席につき、しばらくすると、太宰と国木田と谷崎が会議室に入ってきた。



与「おやおや、男三人ばかりゾロゾロと不景気な面揃えて、どうしたんだい？解剖志望なら結構だけど、今日は営業終了だよ」



『お疲れ様です皆さん』



太「Aちゃん〜、太宰さんに会いたかったかい？」



太宰がニコニコしながらAの肩に腕を回し抱きついた。



『太宰さんが呼び出してきたんじゃないですか』



国「この女の敵が、深田から今すぐ離れろ」



太「国木田君はまるでAちゃんのお父さんみたいだねえ」



谷「ところで」



谷崎が話しをかえるかのように話しだした。



谷「与謝野さんは会議室で何を？」



与「見てのと通り、新聞を読んでいるのさ。


今日は忙しくて新聞読む暇もなかったからねェ


いやァ、今日も良い記事だねェ」



谷「あんまり与謝野さんが新聞好きって印象がありませんけど」



『いい記事って何です？』



与「新聞で一番いい記事はねェ、死亡記事だよ。


この世で一番公平にその人を判じてくれる」



太「全くだね」



Aに抱きついたままの太宰がニコニコした顔で云った。

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