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待ちに待った花火大会。
花火大会が楽しみなのか…
礼王くんと行けることが楽しみなのか…
自分でもよくわからないまま当日を迎えた。
押し入れの奥にかかる浴衣を着ようか迷い、やめた。
なんだか気合いをいれてるって思われたら恥ずかしくて、、、
弟……隣人……と言い聞かせて洋服を手に取るも、花火大会に誘われた夜を思い出すとなぜかザワザワした気持ちになる。
会場に着くと木の近くに彼が寄りかかって待っていた。
無難で目立たないような格好なのになぜか彼の姿は人目を引く。
声をかけた私を見た彼は微妙な間を設け「行きましょう」とそそくさと歩きだした。
(ほら、やっぱり浴衣じゃなくてよかった…)
もし浴衣を着て何も言われなかったことを想像すると恥ずかしさでどうにかなってしまっていただろうな…と苦笑いがこぼれる。
久しぶりの賑やかな夏らしい空間についつい頬が緩んでしまう。
屋台を巡っている内に花火大会の時刻が迫り暗がりと共に一気に人の波が増えた。
(はぐれちゃいそう…)
と思ったときには隣にいたはずの彼はどこかへ消えていた。
(電話…!)
と思い、携帯を取り出すも、彼の連絡先を知らない自分に気がつく。
あまりに浅く脆い関係性。
……そうだよね、だって彼と私はただの隣人で、姉弟みたいな存在で、、、
………いつも確かな約束がない。
ーーー < 確かな約束がない >
自分で発したワンフレーズに嫌でも過去の記憶が蘇る。
感傷的な気持ちで沈んだ私のもとに
「Aさん…!」
と私の名前を呼ぶ声が聞こえた。
顔をあげるとホッとしたような彼と目が合う。
なんだか一瞬泣きたい気持ちになった。
必死に涙をこらえて彼の名前を私も呼ぶと彼が人波を掻き分けてこちらに来る。
あと少しというところで彼の手が伸びて………
はじめて手が触れた………
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作者名:nao | 作成日時:2021年11月19日 22時