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[礼王side]
変じゃないよな…?
目立たないよう帽子にメガネにマスクのフル装備の出で立ちでAさんを待つ。
本当は素顔を晒して日の下を歩きたいけど彼女に迷惑がかかることだけは避けなくてはいけない。
仮にも芸能人。
でも彼女の期待に満ちた横顔を見ていたら、連れて行ったらどんな顔をするのか見たくなって自分から誘ってしまった。
いまだに彼女に自分の本当の仕事を伝えられずにいる俺。
上村礼王というブランドとしての俺としてじゃなくて、素顔の俺を見てほしい気持ちがあるからこそ素直に言えずにいた。
(いつかは言わなきゃな……)
なんて思いながら待っていると、パタパタとこちらに向かってくる幸せな音がした。
『お待たせ、礼王くん』
目の前には青空に映えそうな白色のワンピースに髪をアップした彼女が佇んでいた。
もしかして浴衣かな…?なんていう俺の期待はあっさりと裏切られたわけだけど、
いつもは見えないうなじがチラチラと見えてドキドキが止まらない……
「行きましょう」と平静を装って歩き出したけどきっと俺の顔は真っ赤だ。
マスクがあって助かったとはじめて思った。
久しぶりだからなのか、花火大会の祭りの様子が好きなのか、彼女はずっとニコニコしていた。
(これでも俺より年上なんだよな……)
彼女の仕事は企業秘書でお堅い仕事みたいだけど、俺はいつも彼女のふわふわとしたオフの部分しか見ていないからどうにも年上なのが信じられないでいる。
ただたまに急に年上の余裕をかまされるからその緩急でいつも俺の心は忙しいんだけど、、、
そんな杞憂を彼女は露知らずだから本当に困る……
俺的大問題だ。
そろそろ花火が始まるからか一気に人混みが増えはじめた。
誰かと肩がぶつかる。
「っすみません!」
この人混みの多さで逆にバレてないけどやっぱり少し離れた場所で見た方が良さそうだな…と思い、
Aさんに声をかけようとするとすぐ隣にいたはずの姿が見当たらない。
(え、、、はぐれた?)
慌てて彼女の姿を探し、電話しようとする。
「あ、連絡先知らないや…」
痛恨のミスとはこういうことをいうのだろう。
人波を掻き分けて彼女の名前を呼ぶと、後ろから
『礼王くんっ…!』
とすがる声が聞こえた。
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作者名:nao | 作成日時:2021年11月19日 22時