正直者がバカを見る世界なのに... ページ4
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その言葉を告げてしまったのは、何気ないただの雑談をしている最中だった。
「ジンさんとこうして話すの楽しいなぁ...こんなボクと飽きずに話してくれる人なんてそれこそ首領と同じ研究員くらいしかいないから嬉しい。ほんとジンさん好きだなぁ......」
心の中で言ったつもりだった。
「は...?」
「え?」
目の前で鳩が豆鉄砲を喰らったような顔をして驚くジンに、まさか...自分の心の中で言ったつもりの...ジンには言わないつもりでいたこの気持ちを伝えてしまったのだろうか。
ボクの予想は、残念ながら当たっていたようで「俺のこと、好きなん?」と聞き返してきたジンの顔を見れず、顔が熱を帯びていくのを感じ椅子から立ち上がる。
「あ、あああああああああああああ!!!!い、いい、今の忘れてくださあああああいいい!!!!」
全力疾走で何か言いたげだったジンをそのまま残して研究室を飛び出し、自室へ逃げるように扉に鍵をかけ閉じ籠った。
一瞬だけ見たジンの顔は、困ったような笑みを浮かべていて...言わなければよかったと後悔するには遅すぎたのも自覚している。
ボクに、幸せになる価値なんてない。
出来損ないで不良品なボクには、誰かに愛されることすら叶わない。
次にジンと会ったらどうしよう...前と同じように逃げるか...
どうせ会いに来なくなるだろうし...
コンコンコン
首領から貰った熊のぬいぐるみを抱き締め溢れ出てくる涙を白衣の袖で拭っていると、不意に自室の扉が控え目なノックを知らせた。
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緋絲(プロフ) - ハアァァッッッ…!!!ホントニアリガトウゴザイマスッッ… (2021年9月6日 14時) (レス) id: 8f29c92b75 (このIDを非表示/違反報告)
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