60 ページ19
「___A、おいAさん起きてくださーい」
声と共に身体を揺らされる。誰かが自分を呼んでいる。
ゆっくりと目を開けると、男がAのことを覗き込んでいた。
そして、服を着ていなかった。
Aは声よりも先に身体が動き、咄嗟に男の頬めがけて手を振った。
「っぶね！何すんねんA！！」
『それはこちらのセリフです！ゾム様こそ、何してるんですか！？』
Aが必死に既にタオルで隠されている身体を手で隠す姿を見て、ゾムはようやく何故彼女が殴りかかって来たのか理解したようだった。
「ちゃうやん！俺だってAがいるなんて思ってなかったで！？ここ風呂やし、風呂入りに来ようとしただけやん。そしたら寝てるAがおったからのぼせないように起こしてやったんやで？」
他意はないと説明するゾムは嘘をついているようには見えない。本当に親切で起こしてくれただけのようだった。
自分が如何に失礼なことをしてしまったかを知ったAはゾムに謝罪したが、そんなことで怒らないと彼は優しく笑った。
『では、お先に失礼します。』
「えーもう上がるん？せっかく2人で話す機会なんやからもっと話そうや。」
『ですが……』
流石にこの状態で話すのはちょっとと言おうとした言葉を飲み込む。ゾムが上目遣いで此方をあざとい目でみつめてきたからだ。
ここの幹部は皆顔が良い。Aは別にそこまで気にしたことはなかったが、こうやって見つめられると断りづらいのだ。
そういえば彼はAがのぼせないように声をかけたはずである。話すように引き留められたらもっとのぼせてしまうではないか。
彼はそんなこと知らないというような顔をしてAの腕を引いた。
『それなら少しだけ…』
「ほんま？やったぜ。」
そういってガッツポーズをするゾムは先程までのあざとさはもうなく、にかりと八重歯を見せて笑っていた。
風呂に浸かり直すと、温かいと思っていた湯が少し熱く感じる。湯のせいではなく、身体のせいだ。
「舞踏会もうすぐやなぁ。準備は万端か？」
『かなりできてきました。後はドレスを選ぶだけです。私はそういうのがよく分からないので、メイドに任せようと思っていますが。』
「あぁ、そういえば専属メイドつくったって言うてたな。」
ゾムは少しだけ目を逸らし、遠くを見て言った。僅かな違いだったが、いつもとは違う寂しそうな瞳をしていた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 182人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
未雨(プロフ) - あめさん» コメントありがとうございます。番外編更新しました！是非読んでください！ (2023年4月25日 21時) (
レス) @page39 id: 490941137f (このIDを非表示/違反報告)
あめ(プロフ) - 凄く面白くてどんどん読んじゃいました！！！もし良ければhtさんとの絡みとかみたいです！！！ (2023年4月24日 19時) (レス) id: b7c8f34430 (このIDを非表示/違反報告)
未雨(プロフ) - あまねさん» コメントありがとうございます。軍パロの中で上位…本当ですか？！他にも素晴らしい作品が沢山あるのにそう言っていただけて嬉しい限りです。これからもよろしくお願いします！ (2023年4月19日 22時) (レス) id: 490941137f (このIDを非表示/違反報告)
あまね(プロフ) - え、軍パロの中で上位になるくらいらぶ (2023年4月19日 0時) (レス) @page34 id: 2b125e9969 (このIDを非表示/違反報告)
未雨(プロフ) - 紅さん» コメントありがとうございます。その言葉が励みです…これからもよろしくお願いします！ (2023年4月7日 17時) (レス) id: 490941137f (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：未雨 | 作成日時：2023年3月11日 9時
