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『何故書記長を狙ったんだ？』
「そんなの知るわけ…」
言いかけるとAは手首にもう一度刃を突き立てた。
ポタポタという音も段々速く、大きな音になっている。
「あああ話す話す！えぇと、えっと……そうだ、現場を見られていた可能性があるからだと言っていた！７年前のパーティーで、」
『……』
７年前のパーティー。
Aにとって思い当たる出来事があった。
『依頼人は誰だ。』
「バザロフ！苗字だと思うが確かにそう名乗っていた！……俺の伝えられることは本当にこれだけだ。お願いだから、もうやめてくれ。」
嘘はついていなさそうだった。
最初の威勢の良さはどこへいったのか、もう暴れずに静かに消え入りそうな声で男は懇願した。目隠しも涙で濡れている。
Aは淡々とした手付きで男の拘束具と目隠しを取った。
「……え？」
急いで出血しているであろう場所を確認した男は、そう声を出した。
それもそのはず
Aは男に傷をつけていなかった。
男が横を見やると、ペットボトルを持ったチーノが慈悲深そうな目で見つめていた。中からはポタポタと水が滴り落ちていた。
Aが手首に刃を突き立てたというのも、本当に突き立てただけ。中には全く差し込んでいない。針も同様だ。
血が落ちている錯覚に陥ったのは、チーノの持っているペットボトルからでる水滴が絶妙にそう感じさせるように垂れていたから。
それにAが恐ろしいつくり話を加えることによって恐怖心を最大まで引き上げた。
目隠しをしていて、尚且つ非常に興奮していたために彼は騙された。怯えていたものも全て、頭の中で繰り広げられた想像に過ぎなかったのだ。
全てを悟った瞬間、怯えていた男はすっかり身体から力が抜けてしまった。
その様子を見て先程までの冷酷な表情は一変、Aはまた優しい笑顔をつくり低姿勢になった。
『やっと全て吐いてくれましたね。私から聞きたいことはこれで終わりです。身体に何もなくて良かったですね。』
ある意味急な態度の変化に男も、そしてチーノも背中がぞくりとした。
もう圧のある口調で語らないのは、彼女なりの優しさか。はたまたこの温度差でまた怖がらすためか。
どちらが本当の彼女の素性なのか。はたまたどちらも彼女ではないのか。
チーノは分からなかった。そして、こういった人間の探り合いのようなところに大きな恐怖を感じた。
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未雨(プロフ) - あめさん» コメントありがとうございます。番外編更新しました！是非読んでください！ (2023年4月25日 21時) (
レス) @page39 id: 490941137f (このIDを非表示/違反報告)
あめ(プロフ) - 凄く面白くてどんどん読んじゃいました！！！もし良ければhtさんとの絡みとかみたいです！！！ (2023年4月24日 19時) (レス) id: b7c8f34430 (このIDを非表示/違反報告)
未雨(プロフ) - あまねさん» コメントありがとうございます。軍パロの中で上位…本当ですか？！他にも素晴らしい作品が沢山あるのにそう言っていただけて嬉しい限りです。これからもよろしくお願いします！ (2023年4月19日 22時) (レス) id: 490941137f (このIDを非表示/違反報告)
あまね(プロフ) - え、軍パロの中で上位になるくらいらぶ (2023年4月19日 0時) (レス) @page34 id: 2b125e9969 (このIDを非表示/違反報告)
未雨(プロフ) - 紅さん» コメントありがとうございます。その言葉が励みです…これからもよろしくお願いします！ (2023年4月7日 17時) (レス) id: 490941137f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：未雨 | 作成日時：2023年3月11日 9時
