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60.お願い ページ10

「ねね、お願いがあるんだけど。」



「どした?」




「お母さんのこと、ちゃんと大切にしなよ……?」




「え?」



まさか自分のことを言われると思ってなかったのか、藤ヶ谷くんはすごく意外そうな声を出す。






「親は、いつでも自分の子供のこと、大切に思ってるんだから。」





「………」



「家でも、少しは話すようにした方がいいよ。」




「難しいな。俺は元から無口で愛想がないのは生まれつきの性格だから。」




「だろうね。」



「だろうねって笑」



「ま、とにかくさ、努力してみなよ、ね?」





心からそう思った。せめて、生きている藤ヶ谷くんには、私と同じ思いをして欲しくないから。





「お前が言うと、なんか説得力があるな、考えとくよ。」


目を合わせて笑い合う私たち。






………そういえば、藤ヶ谷くんが笑ってるところ、初めて見たかも。

ちょっとクシャってなってる感じがちょっと可愛いというかなんというか。




いじめられていた私にとって、誰かとこうして話すことも、笑顔を見せ合うことも、すごく、すごく久しぶりのことだった。

61.いなかったことに。→←59.愛されていない。



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作者名:M 1 R A 7. | 作成日時:2020年5月23日 17時

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