58.幸せだった…こと。 ページ8
でも、藤ヶ谷くんの言う通りだった。
いい音楽を聞くこと。
お母さんや、咲里と喧嘩すること、弥子たちと、ワイワイはしゃぐこと……。
死んでしまった私は二度とできない、全てのこと。生きていた時には、ごく当たり前だったこと。
その全てが、幸せだったんだ…………。
どうして、生きている時には分からなかったんだろう。
もし気づけていたら、いじめられてどんなに辛くたって。自ら命をたつことはなかったかもしれない。
そう思うと、また涙腺が緩んでくる。
幽霊になってから死んだけど、私って、意外と泣き虫なんだな。
ちゃんと素直に泣ける子だったら、もっと人生楽だったのかな……
泣きそうな顔を見られたくないから、目を逸らした私に、藤ヶ谷くんはさらに泣かせるようなことを言う。
「泣いてたぞ。お前のお母さん。」
「………えっ、」
「葬式の時、お前の父さんが挨拶して、その間、ずっっと泣いてた。今にもその場に崩れ落ちそうだった。お前の妹も一緒に、すごい泣いてた。」
「そう、だったんだ………」
お父さん、お母さん、咲里。3人の顔を思い出して、胸が締め付けられるような感覚になった。
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作者名:M 1 R A 7. | 作成日時:2020年5月23日 17時