57.生きがい。 ページ7
「時々、テレビとかで大人が言うじゃん、最近の子供は無気力だって。生きがいがない、夢中になれるものがない、将来の夢もない………そんなんだから、勉強でもなんでもやる気が出なくて、ちょっと嫌なことがあったらすぐに死にたがるって。」
「言うね」
「でもさ、」
ずっと前を見ていた藤ヶ谷くんは、改めてまっすぐ私を見た。
「生きがいだとか、夢中になれるものだとか。誰もがそう簡単に見つけられる訳では無いだろ?」
「そうだよね。」
「だからさ、俺は別に、生きがいなんてそんなでっかいものでなくてもいいと思うんだ。例えば、今日の夜ご飯が自分の好きな食べ物だから、夜まで生きていよう。とか、自分の好きな雑誌が明日発売だから、明日までは生きていよう。とか。………そんなんで、いいんじゃない?」
「何それ笑」
思わず笑えてしまった。
………そういえば、笑うのっていつぶりだろう。
「そこは、家族の愛情だとか、友情の温かさとか、好きな人といる時間だとかって言うべきなんじゃないの?」
「うるせぇ」
口を尖らせたから、私はまた笑った。
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作者名:M 1 R A 7. | 作成日時:2020年5月23日 17時