86.悪い予感 ページ36
1月も、今日で終わり。
民家の軒先の梅が少しずつ蕾を膨らませ、公園では、水仙の花がいい香りを漂わせている。
春はそこまで近づいているんだな、それと共に、私のこの世界に入れる時間も短くなっていく。
そんなことを考えながら、太輔の隣を歩く。
……正確に言えば、飛ぶ。
太輔が大きなあくびをする。
太輔は元から低血圧で朝に弱いから、いつも朝はちょっぴり機嫌が悪かった。
「夕べ、遅くまで起きてるからだよ。CDなら昼聞けばいいのに。」
「うーるーさい。夜に聞きたかったんだよ。」
「まあ、寝坊しなくてよかったね」
どうやら、今日はいつにもまして虫の居所が悪いらしい。
「なんか、今日あんまり学校行きたくないな。」
「?、だるいの?」
「それもまああるけど、……どうも悪い予感がする。」
いつになく、神妙な面持ち。
悪い予感…ねぇ。霊感少年太輔が言うと、冗談に聞こえないから怖い。
「や、やめてよ、そんなの。気のせいだって!」
「そうかな。」
「そうだよ!早く行こっ。」
と、腕を引っ張る。……と言っても、実際には、私の手が太輔の腕を掠めるだけなんだけど。
どことなく釈然としない顔の太輔と私は、いつも通り学校へと向かった。
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作者名:M 1 R A 7. | 作成日時:2020年5月23日 17時