80.あの出来事。�� ページ30
「痛っ!!」
声をあげたのは、咲良子だった。
咲良子は、痛そうに頬を抑えながら、私を睨みつける。
「A。どういうつもり？なにしてんの？」
「……」
「あたしに逆らおうっての？」
「そういうこと。」
もう、嫌だった。
弱くて、ずるい自分も。美幸が悲しい顔をするのも。
絶対にもう、こいつの仲間になんか、なりたくない……。
「……」
「咲良子は間違ってる。美幸、あんたになんかした？なんもしてないじゃん！」
「……」
「人をいじめて楽しむなんて、最低だよ……」
私はまだマットに転がっている美幸を引っ張って立たせ、2人で体育倉庫を出る。
そして、扉を閉める前に咲良子にいった。
「次美幸になんかしたら、私が承知しないから。」
「……」
「じゃあね。」
全身血だらけ、アザだらけの美幸を、すぐに保健室に連れていく。
「A、……ありがとう……」
「いいよ。私こそ、ごめんね。今までいじめてて。」
「そ、そんな……Aはすごいよ……私だってずっと、咲良子に何も言えなかったのに……」
美幸の目に涙が滲む。
私はそっと手のひらで拭ってあげた。
「泣いてちゃダメ。今から保健室に行くんだから。」
「うん………」
この時、私は本当の友達に慣れた気がした。
上辺だけじゃない、本当の友達に。
でも、
………そう思っていたのは私だけだった………。
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作者名：M 1 R A 7. | 作成日時：2020年5月23日 17時
