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51.辛かった。 ページ1

長い話を、藤ヶ谷くんはじっと、押し黙って聞いていた。足音が、規則正しいリズムで響いている。






「それからしばらくして、髪の毛を直して、家に帰って………あとは、藤ヶ谷くんも知ってる通り。」




「………」




「今考えると、馬鹿だって思うけど……その時は、すごく悔しかった。辛かった。どうして私は、あんな奴らの言いなりにならなきゃいけないのかって。」




「A、」



「だから、どうしても復讐したかったの………」



藤ヶ谷くんの足が止まる。


そして、改めて私を見た。

その目は、全く感情のない瞳では無かった。



「辛かったな……」


そう言って、私を抱きしめた。




……もちろん、本当に抱きしめたわけではない。


藤ヶ谷くんの両手は宙をきり、私の背中をすり抜けていく。


それでも、何故か、暖かかった。



藤ヶ谷くんの気持ちは、確実に私の心を温めてくれた。




「ありがとう………」



涙が一筋頬を伝い、7色にキラキラと光りながら、儚く消えていった。


デートの後の別れ際の恋人のように、ぎゅっと抱き合っている私たちは、しばらく、そのままでいた。

52.ごめん。→



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作者名:M 1 R A 7. | 作成日時:2020年5月23日 17時

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