あなたのいる世界は (ページ37)

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彼は私の名前を呼ぶと、

少しだけ強く抱きしめ直した

不意な呼び捨てに、胸が高鳴る

碧「俺は、

Aが初めて話しかけてくれたのが嬉しかった

知らないとこに1人で引っ越してきて、

心細かったから」

「うん、」

碧「仕事はどこでもできるけど、

家やとはかどらんなって思って、

たまたま入ったのが、ここやった」

碧「ほんとに、最初仕事だけしに来てたんやけど、

初めて話した日から、それだけやなくなって

…Aと話すことの方が楽しみやった」

「…うれしい」

　

碧「俺、あんまり自分から声かけたりできん方やから…

…Aの名前聞いた日、どんだけ緊張したか、(笑)」

…Aにはわからんやろ、

甘い声で、私の心は少しずつ溶かされていくようだった

碧「風邪引いた日も出勤して…

どんだけ頑張り屋さんやねんて思ったし

…そん時は、俺が守ってあげたいなって思った」

彼の心臓の音が、はっきりと聞こえる

お互いの声と息遣いしか聞こえない、

静まり返ったこの空間は

まるで世界に2人きりみたいに思えた

碧「色々あって傷ついた経験もあると思うけど

でもAが、一歩踏み出して俺に向き合ってくれたのが、

一番嬉しいねん

俺も、Aのことできるだけ

不安にさせたりせんようにしたい

もっと、一緒にいたい

…やから、俺と付き合ってほしい」

「ありがとう、碧海くん

よろしくお願いします、」

碧「碧海」

「え？」

碧「碧海、言うてみ」

「…碧海、」

碧「…かわいい、」

彼は、目線を私の高さまで合わせて

今まで見た中で一番素敵な笑顔を見せてくれた

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