Luv Bias 〈完結〉

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次の日の朝、教室じゃなくて保健室に直行した。

「A先生、昨日のことだけど」

先生がはあってため息をついて振り向いた。

「わかったでしょ？
千賀くんは大人の女性に憧れて私のこと好きだとか本気だとか言ってるんだろうけど、私全然そんなんじゃないの。
大した経験もないし」

「別に俺は先生の経験とかどうでもいーし」

「……千賀くん卒業したら進学するの？」

「まあ一応。受かればね」

「そしたら大学でかわいい子にいっぱい会うし、私のことなんてすぐ忘れるわよ」

「なんでわかったように言うんですか」

「わかるからだよ。大した経験はなくても。
君よりちょっとだけ大人だから」

「……先生の言ってること全然わかんね」

「卒業して何年か経ったらわかるよ、きっと」

また盾復活してるし。

先生の心つかめない。


全然、つかめない。




それから俺は保健室に行くのをやめた。

もうこれ以上何を言えばいいのかわからなかった。

　


5か月後の卒業式の日。

式が終わってみんなが教室で卒業アルバムに寄せ書きしたりわちゃわちゃやってる時に久しぶりに保健室の扉を開いた。

「千賀くん。久しぶりだね」
「……はい」
「卒業、おめでとう」

「A先生」

「何？」


「好きです」


先生が手に持ってたプリントをばさって落とした。

「え？だってあれから全然保健室にも来なかったし」

「考えてたんです。頭悪いけど。
どうやったら先生に本気だって伝わるか」

先生が黙ってプリントを拾うためにしゃがんだから、俺もしゃがんで目線を合わせる。

「卒業して何年経っても。好きだって言い続けたら信じてくれる？」

「……何年経っても？」

「5年でも10年でも。ずっと言う」

先生が床に伸ばしてた手をすくうようにつかむと、先生が困った顔をする。

その顔、やばい。

俺の理性は簡単にふっとんで思わず先生にキスをする。

先生が抵抗しなかったから、止まんなくなった。

ばしってほっぺたを叩かれる。

「あ、調子のりました、すいません」

「……どこで覚えたのよそんなキス」

耳まで真っ赤。


「かわいい」

「からかわないで」

「好きです」


A先生は赤い顔をしたまま、あきれたように笑った。



分厚い盾が少し割れたような気がする。


先生の心まだつかめてないかもしれないけど。




ちょっとだけ、ゆらせたよね？







『ゆれる恋心』…END…

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