Luv Bias 〈完結〉

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「は？何それ？」

「……だって、玉森めちゃくちゃかっこいいのに彼女いないっておかしいよねってみんな言ってて」

みんなって誰。

「性格によっぽど難があるか、ゲイなんじゃないかって噂に」

だから誰だよ、そんなこと言ってるやつは！

「でも性格悪くないし、むしろいいし。私が呼んだら嫌な顔しないで来てくれる。でも一緒に寝ても何もされないから、てっきり」

「……我慢してたんだけど」

すっげえ我慢してたんですけど。

一気に体から力が抜けて、Aさんの上にがっくり倒れこむ。

「玉森重い」

「……部長とはどうなったんですか」

「…別れたよ。玉森に見られたすぐあと。
元々ずるずるしないで別れなきゃって思ってたし」

けっこう前じゃん。

「……玉森に軽蔑されたくなかったし」

Aさんの顔を見ると、Aさんも俺を見た。

「玉森のこと気になってたんだ。
私だってさすがにこの年になって、何とも思わない人家に呼んだりしないよ」

「……え？」

そうなの？

「でもハグもキスすらもされないから。
ああ、やっぱり噂は本当なんだって」

「何で直接聞いてくれなかったの」

「だって！デリケートな問題じゃん」

まあそうだけど。

じゃあさっき好きな人いるか聞いてきたのも、男って意味だったわけ？

なんかもう笑えてくる。


「その割にAさんすぐ寝てたよね」

「あ、でも安眠効果あるのは本当。玉森がいるとよく眠れる」

「俺は全然眠れなかったよ」

「え？！そうなの？」

「当たり前じゃん。好きな人がすぐ横で寝てるのに。
ほんとどんな苦行かと思ってた」

「……好きな人」

「入社以来、ずっとね」


Aさんが俺の首に手をまわす。

「ごめんね」

そう言って、Aさんの方からキスをしてくれた。


「私も好きだよ、玉森」


Aさんを抱きしめると、Aさんもぎゅって腕に力を入れる。

顔を少しはなすと、Aさんが目を閉じた。

そのまま静かに唇を重ねる。


眠れない夜が明けたら。

待っているのは。


きっと、極上の朝。



「今日はゆっくり眠れるね、二人で」
「何言ってんの？」
「え？」
「やっと我慢しないでよくなったのに。寝かせるわけないじゃん」
「……」

「あ、でも。今日はゆっくり眠って。
明日朝からっていうのも捨てがたいな」
「……バカじゃないの」

「Aさん」

「何？」


「好きだよ」








『眠れない夜が明けたら』…END…

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