Luv Bias 〈完結〉

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今日は仕事が早く終わったから、宏光さんがうちに来た。

「はー疲れた」

そう言いながらネクタイをゆるめる宏光さん。

「何か怒ってる？」
「いえ、別に」

「言えよ」

「何でもないです」


「じゃあ言わなくていいよ」


宏光さんが私の手首をつかんで唇を重ねる。


「わかってる。
いつも我慢させてごめん」

「許さないです」
「は？」
「もっといっぱいキスしてくれないと」

しょうがねーな、って笑いながらキスをする宏光さんを。

ほんとは、ひとりじめしたいって思ってる。


「何考えてんの？」
「……欲張りなこと」
「いいよ」
「え？」


「もっと欲張りになっても」


宏光さんが思ってる欲張りと、たぶんちょっと違うけど。

熱をもった唇がそのまま首すじにおりてきて、私は何も考えられなくなる。
　


出会った時から上司と部下だから。

宏光さんは私に何でも教えてくれて、だいたいの場合それは正しい。

宏光さんには何でもお見通しで。

いつも余裕で。

私は何をしても彼には敵わない。



私の横で小さな寝息を立てている宏光さんは、子どもみたいなとても無防備な顔をしているけど。

そういうとこも含めて、いつもなんだか負けた気分になる。


「仕方ない…よね」

「……何が？」
「起きてたの？」
「今起きた。何が仕方ない？」

肘をついて私を見る。

「付き合ってても、お互い同じくらい好きでいるって難しいのかなって」

恋愛をすると。

いつもどっちかの気持ちが重くて。

シーソーみたいに傾いてる。


私たちの場合は、だいたい私の方がいつも重い。



宏光さんは、うん？ってよくわからない顔をした。

わからないよね。

いつも余裕がある宏光さんと違って。

必死なんだよ、私は。

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