10. ページ10
.
「ねぇ岸くん。
岸くんは、わたしとの関係の中で、
これをしたらだめだとか、これをしなければいけないとか、思う必要は全くないからね」
初めて抱き合った後、告白の返事はこれだった。
俺的には「付き合ってください」に対する返事は
「喜んで」か「ごめんなさい」の2択しかないと思ってたから
こんな長い文章で返ってくると思わなくて、めっちゃテンパったのを覚えてる。
「え、っと……OKってことっすか…？」
とたまらず聞いた俺に、ぷっと吹き出しながら、
そのあと「うん」と頷いてくれたAさん
それまでのAさんの俺に対する塩対応っぷりからは、
とてもじゃないけど信じられなくて。
『いくつ離れてると思ってるの？？１０も違うんだよ？』
『まさか！かわいい後輩だよ。』
『岸くん、わざわざこんなおばさん捕まえなくても、君ならすぐいい子が見つかるって。』
言われる度に「Aさんじゃないとだめなんです！！」って言い続けた。
「俺はAさんのこと、女として見てます」って直接言ったことだってある。
そうすればするほど、飼い主に構ってもらいたい犬みたく見えることだってわかってた。
だから、やっと返事をもらえたときは、
俺があんまりしつこいから、無理やり仕方なくOKしたのかと怖かった。
でも、
「岸くんが思ってるより、わたし子どもだよ。」
「え？」
「中身は、高校生で止まってるかも。」
「そ、なんすか…？」
「だから…いつか…失望する、かも」
その言葉を聞いて安心した。
Aさんだって怖いんだ。俺と同じで、どうしたらいいかわからないんだって。
「…Aさんで中身高校生なら、俺なんか中身小学生っすよ！」
「え？」
「あ、それじゃどっちにしろ俺の方が年下っすね…。あ、じゃあ中身は同い年、ってことにしましょ？」
「なあにそれ、勝手に変えられるの？(笑)」
「はい。Aさんのためなら俺、いつか年上にだってなれます。」
「…ほんと？」
「うん。…だから、そん時はAさんも思う存分、高校生になってください」
そう言ったら、Aさんは静かに「うん。」と頷いてくれた。
恥ずかしそうに、でも嬉しそうに。
笑ってくれたその顔が俺の一番好きな表情になった。
それからずっと、Aさんとの関係は続いている。
《優しい雨の降り始め》
fin.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 938人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
くう(プロフ) - 最高です！ (2019年12月5日 23時) (
レス) id: e22c604d4b (このIDを非表示/違反報告)
kcnam(プロフ) - ステキです。もぅドキドキでその先もきになります(^^) (2019年4月15日 14時) (レス) id: 3a92bf89c4 (このIDを非表示/違反報告)
みき(プロフ) - どのストーリーも、キュンキュンです。このまま、結婚へ繋がるのでしょうか？もっと続きが読んでみたいと思いました。よろしくお願いします。 (2019年3月28日 8時) (レス) id: 5ca5d758c8 (このIDを非表示/違反報告)
あられ - ヤバイ！(;゜0゜)めちゃめちゃ面白い！！岸くんカッコいい( ☆∀☆)これからも頑張って下さい♪ (2019年3月23日 8時) (レス) id: 1f2316b085 (このIDを非表示/違反報告)
琉叶(プロフ) - しろさん» しろさま、コメントありがとうございます！一気読みしてくださったとのことで光栄です、！あとがきまで丁寧に読んでくださり…しろさまのメッセージにも、岸くんや作品への愛が溢れております。次作でもぜひぜひお会いできるのを楽しみにしております、！ (2019年3月19日 2時) (レス) id: 2350b99a22 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：琉叶 | 作成日時：2019年3月12日 1時
