１２月３０日。 ページ30
ベッドから起き上がったAはいつも通りだった。いつも通り、母に挨拶をして朝ごはんを食べて服を着替えた。
「ちょっと実家に言ってくる。明日中には帰るよ」
父が笑ってそう言った。母には気づかれないように、Aと目を合わせて。
「そう？ 明日中には帰ってきてね！ 年越しそばは家族で食べなきゃ！」
「……ああ」
いってくる、と言って玄関から姿を消した。
Aは小さく「いってらっしゃい」と言った。
***
冬休みの宿題をやっている時だった。スマホが震えながら、通知音がなった。Aは少し顔を歪ませてスマホを手に取る。
『家の外に出てくれ』
Aは手に持っていたシャーペンを机の上に投げ捨てるように置き、勢いよく階段を駆け下り家の外へ飛び出した。
目の前には、轟がスマホを持って、そこにいた。
「焦凍くん……」
「……昨日、冷静になって考えたんだ。個性のことを一番知っているAが言うんだ。助かるよ、なんて軽口は叩けない」
轟はAに歩み寄る。
「だけど……だけど俺は……」
いつもより強く、強引にAの手を引き、抱きしめた。
「お前と、絶対に別れたくない」
鼻声になっていて、声も震えていた。Aは轟を同じように強く抱きしめた。
「でも……もう決まったことなの。だから、だから最後に思い出を……」
「俺は嫌だっ！」
彼は叫んだ。Aはとても驚いた。彼がこんなにも感情的になっているのを見たのは初めてだったからだ。
「俺は絶対にそんなこと認めない！ ぜってぇお前と春を見る。暑い夏を過ごす。紅葉を見る。……十二月だけの思い出だけじゃ、物足りねぇよ……」
しばらくAは黙っていた。やがて、轟から体を離した。
「私も……私だって、嫌だよ！ もっともっと、焦凍くんと思い出を作りたいよ！ 一緒に笑って、いろんな季節を一緒に見たいよ！」
同じように叫ぶ。言葉を言い終えると、目にためていた涙をボロボロとこぼした。そして、笑った。
「でも……個性で見たモノが、終わったことはなんだ」
轟はAのそんな悲しい笑顔を見た。何故だか分からなかったが、エメラルドグリーンの瞳から涙がこぼれた。
これは悲しいからだろうか？
それとも、悔しいだからだろうか？
彼女に同情しているからだろうか？
訳も分からないまま、もう一度、Aを抱きしめた。
明日で、十二月が終わる。そんな事実から、逃げるように。
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夜桜瑠奈(プロフ) - ナイトメアさん» ありがとうございます！素敵でしたか……よかったです( *´艸｀)私もこういうほのぼのした雰囲気が好きなので、そう言っていただけるととても嬉しいです！閲覧ありがとうございました！よい年を過ごしましょうね！ (2018年1月4日 20時) (
レス) id: 916f6525ff (このIDを非表示/違反報告)
ナイトメア(プロフ) - 完結お疲れ様でした！！サラッと読んだだけなので、特にコメントも何もしていませんが！とっても！素晴らしかったです！やっぱり、いいですね、こういうのは…！素敵です！！これからも頑張ってください！応援してます！！良いお年を！ (2018年1月4日 20時) (レス) id: bdeef1bdf0 (このIDを非表示/違反報告)
夜桜瑠奈(プロフ) - かぁびぃ(駄作者)さん» ご愛読ありがとうございました！いつもご感想をありがとうござます！大変励みになります……！恋人らしくなっていく様子は何とか書くことが出来ましたが、やはり〆が……(笑)こちらこそ、来年もよろしくお願いいたします！m(__)m (2017年12月31日 21時) (レス) id: 916f6525ff (このIDを非表示/違反報告)
かぁびぃ(駄作者)(プロフ) - 完結お疲れ様でした！今回も非常に丁寧な仕上がりで、またぴしっと完結まで出来て本当に凄いなあと思います！どんどん恋人らしくなっていく二人に、胸がきゅんきゅんしました！素敵な作品をありがとうございます！▼そして、来年もよろしくお願いします。良いお年を！！ (2017年12月31日 21時) (携帯から) (レス) id: 87e86307e6 (このIDを非表示/違反報告)
夜桜瑠奈(プロフ) - 雷光さん» すみません……！お答えしたいのは山々なんですが、少しリクエストにはお答えしにくい小説の書き方をしているので……申し訳ありませんが、お断りさせていただきます……m(__)m (2017年12月30日 22時) (レス) id: 916f6525ff (このIDを非表示/違反報告)
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