１２月２９日。 ページ29
『大切な話があるの』
Aにそう送られてきたメッセージを、不安げな表情で轟は見ていた。彼女からの『大切な話』と言うのは、決まって別れ話だと冬美から聞かされていたからだ。
轟はAに言われた集合場所へと向かっていた。場所は、いつもの公園だった。
その場所へ轟が着いた時には、Aはもうそこにいた。クリスマスの夜の時のような、何処を見ているのか分からないような表情をしていた。
「A……」
不安げな声で彼女を呼んだ。彼女は少し遅れて、轟の方へ振り返った。
「いつも突然呼び出してごめんね」
Aはゆっくり彼に近づいた。そして、彼との距離を少し置いて立ち止まった。
「時間もないし、簡潔に言うね」
そう発する彼女の声は震えていた。けれど、彼女は笑っていた。一度深呼吸をして、小さく唇をかみしめてこう言った。
「私、死んじゃうの」
轟は言葉の意味がよく分からなかった。Aは付けたすように、こう続ける。
「私の個性は終末って言うんだ。物や生き物の終わりが見える個性。でね、十二月の頭に見ちゃったの」
泣きそうで潤んだ眼を閉じて、必死に笑おうとして。
「丁度、焦凍くんに告白した日の朝……夢のような空間で、私が崩れていく夢。いつもそうだったの。何かの終わりが見えるときは、必ず三十一日前の朝の夢で、その物が崩れていくの」
だから、と彼女はこう告げた。
「もう、三日しか焦凍くんとの思い出は作れないの」
轟は唖然としていた。うまく思考が動かず、ただただ彼女の言葉だけがハッキリと頭の中で響いていた。
「……言おうかどうか、すごく迷った」
「お父さんには言ったけど、まだお母さんには言ってないの。焦凍くんには、知っておいてほしくて」
「嫌な気持ちになっちゃったのなら、ごめん」
Aの言葉、一つ一つが彼の脳内で響き渡る。言葉を返せないまま、何度も何度も反響する。
しばらく沈黙が走った。過ぎ去ってしまえばよかったのに、その沈黙は思いのほか長くとどまっていた。そんな空気に耐えられなくなった彼女は、小さな声で叫ぶようにして言った。
「ごめんっ、今日は帰るねっ！」
轟の横を通り過ぎていった。Aは終始、笑っていた。けれど違った。轟が惚れた彼女の笑みは、あんな薄っぺらく悲しいものではなかった。
しばらく彼は立ちすくんでいた。
「……嘘だろ」
彼が発したその言葉は、彼女がいなくなってから二十分後のことだった。
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夜桜瑠奈(プロフ) - ナイトメアさん» ありがとうございます！素敵でしたか……よかったです( *´艸｀)私もこういうほのぼのした雰囲気が好きなので、そう言っていただけるととても嬉しいです！閲覧ありがとうございました！よい年を過ごしましょうね！ (2018年1月4日 20時) (
レス) id: 916f6525ff (このIDを非表示/違反報告)
ナイトメア(プロフ) - 完結お疲れ様でした！！サラッと読んだだけなので、特にコメントも何もしていませんが！とっても！素晴らしかったです！やっぱり、いいですね、こういうのは…！素敵です！！これからも頑張ってください！応援してます！！良いお年を！ (2018年1月4日 20時) (レス) id: bdeef1bdf0 (このIDを非表示/違反報告)
夜桜瑠奈(プロフ) - かぁびぃ(駄作者)さん» ご愛読ありがとうございました！いつもご感想をありがとうござます！大変励みになります……！恋人らしくなっていく様子は何とか書くことが出来ましたが、やはり〆が……(笑)こちらこそ、来年もよろしくお願いいたします！m(__)m (2017年12月31日 21時) (レス) id: 916f6525ff (このIDを非表示/違反報告)
かぁびぃ(駄作者)(プロフ) - 完結お疲れ様でした！今回も非常に丁寧な仕上がりで、またぴしっと完結まで出来て本当に凄いなあと思います！どんどん恋人らしくなっていく二人に、胸がきゅんきゅんしました！素敵な作品をありがとうございます！▼そして、来年もよろしくお願いします。良いお年を！！ (2017年12月31日 21時) (携帯から) (レス) id: 87e86307e6 (このIDを非表示/違反報告)
夜桜瑠奈(プロフ) - 雷光さん» すみません……！お答えしたいのは山々なんですが、少しリクエストにはお答えしにくい小説の書き方をしているので……申し訳ありませんが、お断りさせていただきます……m(__)m (2017年12月30日 22時) (レス) id: 916f6525ff (このIDを非表示/違反報告)
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