12月17日。 ページ17
人が多く、空気が重い。二酸化炭素が多いのか、呼吸もしずらかった。だが、そんなことも気にならなくなってしまう程楽しいのはこの場所、ショッピングモールだった。
「お父さん、ごめんね? 無理やり連れだしちゃって。お母さんと行こうと思ってたんだけど、ほら、用事が入っちゃって……」
Aが苦笑しながらAの父にそう言った。すると、父は優しく柔らかい顔を綻ばせた。
「いいんだよ、A。お父さんも最近は一緒に外で遊べなかったしな。それに、受験もあるから十二月を過ぎたらもうほとんど遊べなくなるだろうし……」
沢山買ってやるぞ、と父は楽しそうに言った。
よく友達に「お父さんと出かけている」と言うと意外がられる。周りの友達はみんなあまり父親が好きではなかったからだった。
だが、Aは父を嫌っていなかった。どころか、昔からよく外に連れていってもらっていたので、とても仲が良かった。
「そういえば、彼氏が出来たんだってな」
「なっ……なんでそれを……」
「お母さんに聞いたんだよ」と言った父の顔を、Aは人混みを歩きながら軽くにらんだ。
「ふん……それが何?」
父はへらっと笑いながら言葉を返す。
「いやぁ、少し前までは野原を走り回ってたのに、今となっては彼氏を持ったんだなぁ思ってな」
ちょっと寂しいかも、と付け足す。Aはプッと吹き出してこう言った。
「なにおじさん臭いこと言ってるの?」
「おじさんとは、失礼な……」
二人は顔を見合わせて笑った。父が適当にオシャレな店に入ると、Aは目を輝かせて服や鞄を見た。そんな姿を、どこか懐かしそうに父は見ていた。
そして、二人とも大きな紙袋を両手にぶら下げて静かな電車に揺られていた。窓からは、微かな橙色の光が差し込んでいた。
何かを決心したように、Aは拳をぎゅっと握りしめた。
「ねぇ、お父さん」
「ん? なんだ?」
誰もいない電車の中で、Aだけの声が響いた。
「……実はね」
***
静かに息を吸う音がした。服が擦れる音と、拳が空を切る音だけがその場に響いていた。足元には氷も張っていた。
「焦凍!」
轟にとって、一番憎いとする人物の声が聞こえた。その声の主、エンデヴァーはズンズンと轟に近づいた。
「稽古もサボって、何処に出かけている」
近づいてくるエンデヴァーの横を轟は目を合わせずに通り過ぎた。エンデヴァーの怒鳴り声が聞こえたが、気にせずに轟は自室に戻った。
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夜桜瑠奈(プロフ) - ナイトメアさん» ありがとうございます!素敵でしたか……よかったです( *´艸`)私もこういうほのぼのした雰囲気が好きなので、そう言っていただけるととても嬉しいです!閲覧ありがとうございました!よい年を過ごしましょうね! (2018年1月4日 20時) (レス) id: 916f6525ff (このIDを非表示/違反報告)
ナイトメア(プロフ) - 完結お疲れ様でした!!サラッと読んだだけなので、特にコメントも何もしていませんが!とっても!素晴らしかったです!やっぱり、いいですね、こういうのは…!素敵です!!これからも頑張ってください!応援してます!!良いお年を! (2018年1月4日 20時) (レス) id: bdeef1bdf0 (このIDを非表示/違反報告)
夜桜瑠奈(プロフ) - かぁびぃ(駄作者)さん» ご愛読ありがとうございました!いつもご感想をありがとうござます!大変励みになります……!恋人らしくなっていく様子は何とか書くことが出来ましたが、やはり〆が……(笑)こちらこそ、来年もよろしくお願いいたします!m(__)m (2017年12月31日 21時) (レス) id: 916f6525ff (このIDを非表示/違反報告)
かぁびぃ(駄作者)(プロフ) - 完結お疲れ様でした!今回も非常に丁寧な仕上がりで、またぴしっと完結まで出来て本当に凄いなあと思います!どんどん恋人らしくなっていく二人に、胸がきゅんきゅんしました!素敵な作品をありがとうございます!▼そして、来年もよろしくお願いします。良いお年を!! (2017年12月31日 21時) (携帯から) (レス) id: 87e86307e6 (このIDを非表示/違反報告)
夜桜瑠奈(プロフ) - 雷光さん» すみません……!お答えしたいのは山々なんですが、少しリクエストにはお答えしにくい小説の書き方をしているので……申し訳ありませんが、お断りさせていただきます……m(__)m (2017年12月30日 22時) (レス) id: 916f6525ff (このIDを非表示/違反報告)
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