12月12日。 ページ12
お昼休み、空になってしまったお腹を満たそうとそそくさ弁当を鞄から取り出す。
そうしている少しの間に、いつもの三人が集まってきていた。
近くにある机を四つ、一つの机にする形で集めると、それぞれ小さく手を合わせて昼食を取り始める。
「んーおいし! あ、そういえば最近さ、好きなアイドルの……」
今日も変わらず、ユキナは自分の話したいことを話しだす。フワリは笑って相づちをうったりしているのだが、スズはすぐにスマホを取り出してゲームをしだす。画面を横に向けてイヤホンを片方だけつけて、親指を必死に画面に滑らせていた。
しばらくすると、近くの窓から隙間風が音を鳴らした。ブルッと寒そうにユキナが震える。
「さむっ! A、ちょっと閉めてきてくれない?」
「うん、わかった」
その窓から一番近かったAは椅子から立ち上がり、窓を閉める。
窓から見えたのはグラウンドの景色だった。ふと、見覚えのある後姿が視界に入った。
「あ」
そう声を漏らすと「何々?」と言ってユキナが興味津々な顔をして立ち上がった。
「あー! 轟くんじゃん!」
嫌という程目立ってしまう、紅白の髪型を揺らしサッカーボールを蹴っていた。
「あいつら昼ごはん食べるの速いなぁ」
ゲーム画面を見たままスズが呟く。横で小さな弁当を食べていたフワリも続けていった。
「昼休みに入るまで、あと五分もあるのに……」
「球技大会が近付いてるんだっけ?」
Aがそう思い出したように言いながら椅子に座る。同じようにユキナも座ると、頷きながら話を続ける。
「そうそう、男子はサッカーだっけ? 私らはドッチだっけか……たるいなぁ」
椅子の背もたれに思いっきりもたれながら伸びをする。苦笑いするAの横ではスズが購買のチョコチップメロンパンを頬張っていた。
ユキナがニヤニヤとしながらAに顔を近づけた。
「轟くんにいいところ見せないとねー!」
Aはユキナの額辺りをグイッと押し返す。「ぐえっ」という声の後、少し怒ったようにAは返した。
「余計なお世話ですー!」
***
「お? どうした轟ー」
同時刻、轟は一緒にサッカーをしていたクラスメイトに話しかけられる。
Aのクラスの方をぼーっと見つめていた轟は、彼の声で我に帰った。
「悪い、なんか視線を感じてな」
「お? 彼女か? このリア充めー!」
いいから、とごまかすように轟はサッカーボールを味方にパスした。
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夜桜瑠奈(プロフ) - ナイトメアさん» ありがとうございます!素敵でしたか……よかったです( *´艸`)私もこういうほのぼのした雰囲気が好きなので、そう言っていただけるととても嬉しいです!閲覧ありがとうございました!よい年を過ごしましょうね! (2018年1月4日 20時) (レス) id: 916f6525ff (このIDを非表示/違反報告)
ナイトメア(プロフ) - 完結お疲れ様でした!!サラッと読んだだけなので、特にコメントも何もしていませんが!とっても!素晴らしかったです!やっぱり、いいですね、こういうのは…!素敵です!!これからも頑張ってください!応援してます!!良いお年を! (2018年1月4日 20時) (レス) id: bdeef1bdf0 (このIDを非表示/違反報告)
夜桜瑠奈(プロフ) - かぁびぃ(駄作者)さん» ご愛読ありがとうございました!いつもご感想をありがとうござます!大変励みになります……!恋人らしくなっていく様子は何とか書くことが出来ましたが、やはり〆が……(笑)こちらこそ、来年もよろしくお願いいたします!m(__)m (2017年12月31日 21時) (レス) id: 916f6525ff (このIDを非表示/違反報告)
かぁびぃ(駄作者)(プロフ) - 完結お疲れ様でした!今回も非常に丁寧な仕上がりで、またぴしっと完結まで出来て本当に凄いなあと思います!どんどん恋人らしくなっていく二人に、胸がきゅんきゅんしました!素敵な作品をありがとうございます!▼そして、来年もよろしくお願いします。良いお年を!! (2017年12月31日 21時) (携帯から) (レス) id: 87e86307e6 (このIDを非表示/違反報告)
夜桜瑠奈(プロフ) - 雷光さん» すみません……!お答えしたいのは山々なんですが、少しリクエストにはお答えしにくい小説の書き方をしているので……申し訳ありませんが、お断りさせていただきます……m(__)m (2017年12月30日 22時) (レス) id: 916f6525ff (このIDを非表示/違反報告)
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