１２月０１日。 ページ1
「す、好きです！ 付き合ってください！」
芯が無く、緊張していたためか裏返った声が響いた。彼女は人通りの少ない校舎裏に彼を呼び出すなり体を四十五度に勢いよく曲げ、彼を困惑させた。
彼は「またか」と思ったのと同時に「なんだ」とも思った。彼女の大きな声で誰かに見られたのではないか、と周囲を見渡す。
放課後の学校は静かで、生徒はいなかったため人目につくことはなかった。
「その……なんだ、顔を上げてくれ」
申し訳なさそうに彼は言った。目をつぶったまま、恐る恐る彼女は顔を上げる。
「い、いきなりでごめんなさい……本当に、あの……」
言葉を詰まらせながら何かを伝えようとする彼女の様子を見て、彼はこう返した。
「俺で良ければ」
「うん……え？」
ワンテンポ遅れて、彼女は彼の言葉を理解した。告白が成功した、と。
「ほ、本当にいいの！？」
さっきまでとは違い、明るい表情で彼に詰め寄った。少し引き気味に彼が退くと「あ、ごめん」と言って距離を取る。
「ああ、お前がいいんだったら」
彼が告白の返事にしてはそっけなく言った。対照的に、彼女は嬉しそうに微笑んだ。
彼――轟焦凍は、彼女の様子を見て少し悪く思った。なぜなら、自分が彼女の事を好きで告白を受けた訳ではなかったからだ。
ただ、いつもしつこく告白してくる女子に「彼女が出来たから」といえばもう告白してこなくなる。そう思ったからだった。
彼女のことは去年、中学二年生の時同じクラスで、名前は
ただ――。
「えっと……帰ろっか？」
少し首をかしげて笑う彼女の顔に、惹かれなかったといえば嘘になる。少なくとも嫌いではなかったから了承した。轟はそうも思っていた。
「ああ」
轟が軽くそう言い歩きだす。慌ててAは轟の横に駆け寄ると、二人は少し距離をあけて通学路を歩き始めた。
*
沈黙の空気のまま十分ほど経った頃「あ」と言ってAが足を止めた。それに気づいた轟も足を止める。
「私こっちで……」
気まずそうに細い脇道を指す。暮れかけの夕日が丁度見える道だった。
手を上げて「じゃあ」と言った彼女を見て何かを思い出したように「待て」と呼び止めた。
「連絡先、交換しておかないか？」
パッと笑顔になったAは「もちろん」と言ってスマホを取り出した。
――こうして二人の十二月は始まった。
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夜桜瑠奈(プロフ) - ナイトメアさん» ありがとうございます！素敵でしたか……よかったです( *´艸｀)私もこういうほのぼのした雰囲気が好きなので、そう言っていただけるととても嬉しいです！閲覧ありがとうございました！よい年を過ごしましょうね！ (2018年1月4日 20時) (
レス) id: 916f6525ff (このIDを非表示/違反報告)
ナイトメア(プロフ) - 完結お疲れ様でした！！サラッと読んだだけなので、特にコメントも何もしていませんが！とっても！素晴らしかったです！やっぱり、いいですね、こういうのは…！素敵です！！これからも頑張ってください！応援してます！！良いお年を！ (2018年1月4日 20時) (レス) id: bdeef1bdf0 (このIDを非表示/違反報告)
夜桜瑠奈(プロフ) - かぁびぃ(駄作者)さん» ご愛読ありがとうございました！いつもご感想をありがとうござます！大変励みになります……！恋人らしくなっていく様子は何とか書くことが出来ましたが、やはり〆が……(笑)こちらこそ、来年もよろしくお願いいたします！m(__)m (2017年12月31日 21時) (レス) id: 916f6525ff (このIDを非表示/違反報告)
かぁびぃ(駄作者)(プロフ) - 完結お疲れ様でした！今回も非常に丁寧な仕上がりで、またぴしっと完結まで出来て本当に凄いなあと思います！どんどん恋人らしくなっていく二人に、胸がきゅんきゅんしました！素敵な作品をありがとうございます！▼そして、来年もよろしくお願いします。良いお年を！！ (2017年12月31日 21時) (携帯から) (レス) id: 87e86307e6 (このIDを非表示/違反報告)
夜桜瑠奈(プロフ) - 雷光さん» すみません……！お答えしたいのは山々なんですが、少しリクエストにはお答えしにくい小説の書き方をしているので……申し訳ありませんが、お断りさせていただきます……m(__)m (2017年12月30日 22時) (レス) id: 916f6525ff (このIDを非表示/違反報告)
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