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Aは不機嫌気味な声色で伏黒を睨む。へぇ、と釘崎は少し嬉しそうにAの顔を見た。
「アナタ、分かってるじゃない！」
釘崎より身長が高く、厚底のスニーカーを履いているAは釘崎の上目遣いを受けながらその言葉を聞いた。
その瞳に「麗しい……」と顔を覆いながらその場にうずくまった。
「……お前、本当に気に食わないな。こんな美少女といるなんて」
顔を塞いでいた手の間から細目で伏黒を見上げる。
「はぁ……」
冷ややかなAの視線を受ける伏黒は、いつもの事のように受け流す。
その後自然な成り行きでAは2年生たちと合流する。晩飯前の特訓を受けると聞き、仕事までに時間が空いていたAは少し覗いてみることにしたのだ。
「あれ、Aさんじゃないか」
棍棒を構えたまま顔だけ3人の方へ向ける。「知り合い？」「去年の先輩らしいぞ」と、釘崎と伏黒はAの少し後ろで話す。
「真希ちゃん〜！久しぶり！」
ひらひらと手を振りながら近づく。そして自然に彼女の髪の毛に手を添えながら目を細めて微笑んだ。
「いつ見ても綺麗な髪だ」
「ははっ、そりゃどーも。それにしても珍しいな、先輩がココでふらふらしてるなんて」
まぁね、と辺りを見渡す。
(悠仁が生きてることはまだこの子ら知らないんだっけ……)
「狗巻棘くんにパンダくんも元気かい？」
ポケットに手を入れたがら少し離れたところにいた2人にも声をかける。
「しゃけしゃけ」
「おう！おかげさまでな」
そうか、と軽く返事をした後に「それじゃそろそろ戻るわ」と踵を返した。
「もう行っちゃうの？」
「明日も仕事が早くてね。また会いたかったら願ってよ」
そう言うと颯爽と彼女は姿を消す。「すんげー、飛んでったぜ、見たかよ伏黒」と釘崎は呟くが、伏黒は浮かない顔のままだった。
「伏黒、嫌われてんの？」
その様子を見た釘崎が再度伏黒に問う。彼女がいなくなった道の後を呆然と眺めながら「ああ」と短く返事をした。
「私らが1年生の頃……じゃないな、もっと前からAさんは伏黒にあんな感じらしい」
真希は苦笑を浮かべながら棍棒を振り回す。
「へぇ〜」
「さて、特訓だ。Aさんに追いつけるようにな」
「やっぱ強いの？Aさん」
ザァッと木々が揺れるほどの風が吹く。それは真希の髪を大きく揺らし、何かを予感させる風だった。
「あぁ──強かったな。一度目は軽い組手で、二度目は特級呪霊を相手にしてる時に見たけど、何してるのか、どんな術式を使ってるのかすら分からなかったよ」
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作者名：桜芽杏 | 作成日時：2021年1月11日 20時
