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今日も今日とて、Aは高校を転入する。それは呪術師としての任務でもある。

「初めましてー!Aでーす!勉強も運動も最強なのでよろしくお願いしますー!」

作り笑いをうかべるAは、陽気そうな、人を舐めた声の調子で教卓に立っていた。
彼女は自らを最強と名乗る。それは、自らの呪力となる源を探すためである。

「えー、Aさんに質問は……」

担任の教師が苦笑を浮かべながらそう呟くと、一人のガタイの良く、ガラの悪い少年が手を挙げた。

「せんせぇ〜!ソイツの名字はなんですか〜!あとなんでパーカー許されてるんですか〜!」

教室の空気が凍りつく。机の上に足を上げて、シャツは第二ボタンまで開けていた。

(あぁ、アイツからなら簡単に採れそうだ)

「そ、それはですね……」

Aの隣にいた教師が慌てて答えようとすると、彼女は何も言わずに歩き出した。軽い足取りで、虫取りに行く少年のように目を輝かせていた。

「ね、知りたい?」
「あぁ?」

低い声で少年は彼女を睨みつける。彼女は笑ったまま中指を立てた。

「ははっ、教えるわけないじゃん」


数秒遅れて、彼は煽られていることに気がついた。その間の沈黙の間に、教室にいたほとんどの男女が顔を背ける。

恐怖、絶望、失望、諦め。

負の感情が渦巻く。それは1クラス分でも、彼女の予想を超える負の感情。彼はそれほどこのクラスに畏れられていたんだろう。


「てめぇ!!!殺すぞ!!!」

彼はAの胸ぐらを掴んだ。静かにAは彼の目を見据える。


「じゃあ、どうぞ」

その前に、と彼女は耳を抑えながら忠告の言葉を放つ。


「貴方が死ななければいいね。"陰愚痴(かげぐち)"」

少年はその途端、椅子から転げ落ちた。なにかに怯えるように壁まで後ずさり、頭を抱えて謝罪の言葉を連呼する。

クラスメイト一同は困惑し、眉をしかめ、ほっと息を着くものもいれば、より恐ろしい顔をする者もいた。

Aはただ、チャイムの音が鳴り響くと同時に着席した。

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作者名:桜芽杏 | 作成日時:2021年1月11日 20時

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