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Aが虎杖の部屋から出た後、自室に向かっている途中に五条がポンとAの肩に手を置いた。
「よ！他の3人は？」
「……悠仁の部屋で寝落ちしてる」
離せよ、と手をはらいながら先へ進む。
「話したの？」
「だいたい」
「そっ」
その後を五条が続き歩く。少し歩いてから、ピタリとAは足を止めた。
「あーー……のな、今度、世界で3個しか作られない極上の枕を買ってきてくれたら」
くるり、と五条へ指を指し、ニッと笑う。
「悟、って、呼んでやるよ」
上から目線のその言葉に、五条はひとつも不愉快な表情を見せることなく、口元を緩ませた。
「先生に、任せときなさい！」
数日後、Aは夜蛾の元へ訪れていた。
「2級呪霊？またザコ？最近多くない？」
「あぁ。だから今回は1年生の引率がてら行ってきてもらう」
夜蛾は羊毛フェルトを作る手を止めてAを見た。「はいよ」と、とっととその場を去ろうとするAをもう一度呼び止めた。
「A」
「ん、何？」
「……気をつけてな」
「ははっ、久々に聞いたな。ありがとう、学長、気をつけて行ってくるよ」
相手は2級。Aが気をつける相手ではない。それでも夜蛾にとって彼女は、まだまだ子供だった。
(覚えてないだろうな……今日で丁度12年。干支が1周まわったという日ということに)
夜蛾はAの後ろ姿を見送ると、また羊毛フェルトを作り出した。
「明さん、お疲れ様、体調悪くない？」
「来るの遅いッスよ！Aさん！」
4人の元へ軽々と降り立ち、「状況は？」と尋ねる。
現在、1年生たちでも対処可能な呪霊と判断していたものが困難となったこと。伏黒の姉が危険な状況にあること。
「潔高さんと電話してたのか……いいな……」
「なんで伊地知さんのこと名前で呼んでるの？仲良いの？」
虎杖の疑問にAは即答で返す。
「え？可愛いから」
呆然とした4人を置いて、Aはそうだね、と手を顎に添える。
「そうなってくると引率の話が変わってくる……行けるか分からないけど下見してくるよ」
「え？でも、Aさん、3級でしたよね？」
新田の言葉に1年生は戸惑いの表情を見せた。
「うん、だから様子見だけ。ささ、みんなは帰ってて」
1年生達の背中を押して車に押し込もうとする。伏黒は「俺は校長に挨拶して帰るので……」とさりげなくその手から逃れた。
その夜、大きな橋の下で、Aは伏黒に声をかけることになった。
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作者名：桜芽杏 | 作成日時：2021年1月11日 20時
