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キッパリと答えるAから目を逸らし、伏黒は溜息をつきながら「気にしてないから別にいい」と返す。
そっか、と虎杖がテレビ画面の方へ目を向けると、すでに釘崎が虎杖のキャラクターを倒していた。
2人がゲームについて揉めあっている時、Aは考えるように「でも確かにな」と呟く。
「何がです？」
「いや……流石に3人中2人が名前呼びで、お前だけフルネーム呼びは可哀想だろ、なんか私が嫌だ」
「その妙な倫理観はなんなんですか……」
「いじめはよくない」
うん、とAは頷く。
『A、さん？』
『うわ、何だこのガキ』
『アナタもガキでしょ……』
『うるせぇ小学生が』
『伏黒恵のお姉さん、大丈夫なのか』
『……別に、アナタが気にすることじゃないですよ』
『なぁ、伏黒恵』
『……なんですか、Aさん』
呆れながら目を細める伏黒の頭に手を置く。
「最近は変わったもんな、恵も」
中学の時は特にうざかったけど。そう言ってAはぐしゃりと大きく伏黒の頭を撫でる。
伏黒はその力に押され、少し顔を下に向けたまま呆然とした表情で固まっていた。
「見てくださいよ、釘崎さん、伏黒くん照れてますよ」
「確かに……あれは完全に照れていますねぇ、虎杖くん」
「違ぇよ」
苛立ったように伏黒は振り向きながら彼を見ていた2人に声を荒らげた。
伏黒はその手を退けようとする素振りもなく、目を伏せた。
「でも、Aさんがすごい人なのも、信念を持って動いていたのも知ってたからな。少し嬉しかったのは本当だ」
「ヒュー！」と煽てる2人に飛びかかるように「うるさい！」と声を上げる。
Aはその光景を、目に焼きつけるようにして見ていた。
(……そうだよ。私は、自分の好きな人たちを守ってやるために呪術師になったんだ。
もっと強くならないとな)
釘崎と虎杖に誘われ、その後A達は夜が開けるまでゲームをしつくしていた。
そこで3人は知る。Aの大まかな術式と成り立ちを。七海以外に話したことのなかったような、彼女が体験した奇想天外な出来事の数々を。
「へぇ、先輩の術式ってオリジナルがほとんどなんだ」
「そもそも直感含め、五感全部の術式を使える人が少ないからな」
「……と、いうことは、中学はヨーロッパのところ通ってたの？」
「まあ、一応。長期休みとかに、結構高い頻度で高専には戻ってきてたけどね」
「てことは先輩、英語はペラペラなの！？」
「有名所はだいたい話せるぞ」
「み、見えない……」
その後は他愛もない会話で時間は潰れ、夜は明けた。
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作者名：桜芽杏 | 作成日時：2021年1月11日 20時
