3輪 ページ3
「これ、20分後にあそこのホールで行うソロコンサート！受験の息抜きに来てみてよ、涼しいからさ」
じゃあね！とまた風のように去るAの後ろ姿を見る。
(どうして俺が受験生って分かったんだ)
それによく考えると、彼女の顔は前とは違うような気がしたし、髪の毛も整えられていた気がする。
コンサート前本番であったことが心操にはその時やっと理解出来た。
彼はすぐにそのチケットをポケットに仕舞おうとした。が、不思議とそのチケットを丸めることは出来なかった。興味本位でチケットを見る。
『脅威のピアニスト』
『彼女は"ダチュラ"なピアニスト』
ダチュラとはどういう意味だろうか。と、思いながら目を下にやると、小さな文字でこう説明されてあった。
『ダチュラの花言葉』『愛嬌』『夢の中』『貴方を酔わせる』
ダチュラと思われる朝顔のような花の絵も描かれてあり、道からの案内図も記載されている。ちゃんとしたチケットであった。
気がつくと心操はコンサート会場の近くまで来ていた。少し悩んだ末、彼はゆっくりと足先の方向を変える。円形でいかにもな会場内の受付にはもうほとんど人の気配がなかった。
「愛園Aさんのコンサートへお越しのお客様でいらっしゃいますか？」
チケットを横目にした案内の女性が心操に話しかける。
「そう、です」
「ではチケット拝見をさせて頂きます」
女性はチケットを受け取り裏を見る。すると、少し驚いたように目を丸くし、すぐに満面の笑みへと表情が戻る。
「確認致しました。こちら1階の入口1番から、直線に進んで頂いた最前列のA席の15番の席におすわりください」
最前列だったのか、と言葉にせず心操は小さく頭を下げ座席へと向かう。
会場に入ると、心操が想像していた10倍もの広さの会場であったことに気がつく。2階席、そして少し3階席もある構造で、視野いっぱいに座席が広がっている。
自分席へ向かうと、そこはちょうどピアノの目前、つまり中央であった。周りの席はほとんど埋まっている中、最前列は左右どちらも人席ずつ空いている状態からして、特別な席であることが分かる。
(この会場の最前列の真ん中って……どうしてこのチケットを俺に渡したんだ)
5分と待たない間に会場は暗転した。諸注意のアナウンスが流れ、会場は静まり返る。
「それでは、愛園Aさんによるソロコンサートが始まります」
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桜芽杏(プロフ) - にょるとさん» 閲覧ありがとうございました！ピアノの曲のようなお話、と言っていただき、私の作品への思いと夢主たちの物語にこもった気持ちが伝わっているのがわかり、とても嬉しいです。こちらこそわざわざコメントまでありがとうございました！ (2021年9月12日 11時) (
レス) id: 4e2ed4ed51 (このIDを非表示/違反報告)
にょると(プロフ) - 本当に本当に素晴らしいピアノの曲のようなお話でした…！！素晴らしい作品をありがとうございます！ (2021年9月12日 3時) (レス) id: 4a7d856f5b (このIDを非表示/違反報告)
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