20輪 ページ20
秋が来た。
Aは変わらず時々コンサートに出演しては、雄英高校に通っていた。
あの時、Aのミスはネット上で一時話題となったが、ほとんどが肯定的な声だった。批判的な意見もあったが、それは些細なミスを指摘するもので、ミスなんて誰にでもあるもの、とされる。
それどころか、初めて人間らしいところを見せたということで親近感が湧いたという彼女のファンの声が多く挙がっていた。
そんなSNSの投稿を見ていると、心操はまた顔を紅潮させた。
(ほんとに、俺が思っている以上にAさんは凄い人なんだな……)
あの日から少しずつ、彼の中でのAの存在が明確となってきていた。
彼女が更新するSNSやピアノの演奏動画より、彼女から送られる「最近元気？」というメッセージの方が気分が高揚すること。
「文字打つより電話の方が話しやすくない？」と、電話を繋げて咳払いをしながら「あーあー、聞こえる？」と機械越しの声を聞いた時、思わずイヤホンの片方を外してしまったこと。
「じゃあね」と告げる彼女の声を、何度も惜しんだこと。
冬が来た。
クリスマスイブは各自家族と過ごした。なんでもない一日だとばかり思っていたから、Aから電話がかかってきた時には心操はとても驚いた。
『ごめん、寝ようとしてた？』
夜12時前。ベッドに腰かけたまま心操は表情を崩す。
「いや、大丈夫ですよ」
『へへ、ならよかった』
特に何も無いんだけどね、といつもの調子で世間話をし始める。少しして『あ』と嬉しそうにAは話題を切りかえた。
『ね、時計みてよ』
パッと顔を上げ時計を見ると、12時をちょうど差していた。
『人使くん、メリクリ！』
「ああ、えっと、メリークリスマス」
『あはは！これでイブもクリスマスも人使くんと話せた！どうよ、この発想？』
はしゃぐ子供のように笑っていることが電話越しでもわかる弾んだ声。
「凄いですね」
『……笑った？』
「少しだけ」
お互い少し間を置き、クスリと笑う。
『じゃあ、そろそろ寝ようか。おやすみ、いい夢を』
「おやすみなさい」
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桜芽杏(プロフ) - にょるとさん» 閲覧ありがとうございました！ピアノの曲のようなお話、と言っていただき、私の作品への思いと夢主たちの物語にこもった気持ちが伝わっているのがわかり、とても嬉しいです。こちらこそわざわざコメントまでありがとうございました！ (2021年9月12日 11時) (
レス) id: 4e2ed4ed51 (このIDを非表示/違反報告)
にょると(プロフ) - 本当に本当に素晴らしいピアノの曲のようなお話でした…！！素晴らしい作品をありがとうございます！ (2021年9月12日 3時) (レス) id: 4a7d856f5b (このIDを非表示/違反報告)
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