15輪 ページ15
鳴り止まない建物が崩れる音。ヒーローを求める声。
(俺は、俺は今、何が出来る！？)
Aに引かれながら必死に頭を回す。
(どうすれば、どうすればいい！？一体どうすれば……！？)
「人使！」
名を呼ばれ、ハッと顔を上げる。
「だいじょーぶ！」
その満面の笑みを見た刹那、視界が暗転した。
なにかに押しつぶされたような不快感。すぐ側に感じる人肌。
(……何が起きた？)
一瞬気絶していたのか、記憶が抜け落ちていたその状況で、心操はゆっくりと目を開ける。
「人使くん、人使くん」
囁くような声が聞こえた。
Aは壁際にいた心操を庇っていた。Aの後ろにはなにかのオブジェクトが倒れ込んでいた。
「あ……Aさん……！後ろ……！」
「はは、そんな引きつった顔しないで！大丈夫、そんなに重くないし、ほとんど重さは壁にいってるから。ちょっと頭打ってたけど、どこも痛くない？」
「俺は大丈夫……」と言葉を返すと同時に、遠くで名も知らぬヒーローの声が響く。
「ヒーロー、来たみたいだ。早く逃げよう」
Aは心操の手を掴んで倒れ込んでいたオブジェクトを倒れてこないよう慎重にくぐり抜け、脇道を使いながら遠くへ走る。
途中、避難誘導の指示を行うヒーローを見つけ、2人はその場所まで止まることなく走り続けた。
「ひーっ！疲れたー！」
明るく振る舞うAの姿に心操はその異変に気付かずにいた。
「もう大丈夫、ですかね？」
肩で息をする心操にAは親指を立てる。
「うん！大丈夫でしょ！もうちょっと待機して帰れそうになったら帰ろ！」
息を切らしながら紙袋がぐちゃぐちゃだ、と困り眉をして笑っていた。少し遅れて、確かに、と心操も小さく笑い返した。
数分がたった頃には既に事態は落ち着いていた。人混みにならないよう順番に交通機関を使用するよう誘導がかけられる。
2人はそれぞれ逆の駅だった為、改札前で別れの言葉を交わす。
「じゃあね、人使くん！次会う頃は受験が落ち着いてからの方がいいのかな？」
「そう、ですね……」
次に会うのは半年以上過ぎた時。
今日なんて前あってからたった1ヶ月ほどしか経っていないのに、顔を見合せた瞬間の高揚感は今までに感じたこともないようなものだった。
そう理解した刹那、心臓が潰れる。
──半年以上、会えない？
明日、貴方を見に行きます。
黙っててすみません。
秋にもう一度、会いたいです。
時々、メッセージ送っても良いですか。
(なんだ、この言葉は)
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桜芽杏(プロフ) - にょるとさん» 閲覧ありがとうございました！ピアノの曲のようなお話、と言っていただき、私の作品への思いと夢主たちの物語にこもった気持ちが伝わっているのがわかり、とても嬉しいです。こちらこそわざわざコメントまでありがとうございました！ (2021年9月12日 11時) (
レス) id: 4e2ed4ed51 (このIDを非表示/違反報告)
にょると(プロフ) - 本当に本当に素晴らしいピアノの曲のようなお話でした…！！素晴らしい作品をありがとうございます！ (2021年9月12日 3時) (レス) id: 4a7d856f5b (このIDを非表示/違反報告)
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