じゅうさん〜 ページ13
要らないなら言わなくても結構よ。
そう言ったマスターに、少し考えてからホークスは問う。
「……なんでマスターさんはお金ではなく人の話を？」
「貴方に話さなくてはいけない理由は私にはないわ」
「消費者としての知る権利、ってやつだから。じゃあダメですか？」
ヘラりと笑えば、マスターは編み物を進める手を止めて、揺り椅子から立ち上がった。
「時は金なり──そんな言葉がある。
時間はお金と同じように非常に貴重なもの。だから有意義に使いましょう、という言葉。
人の話ってね、無駄な話は本当に無駄なの。
でもいい話っていうのは、その人のそれまでの人生の重みや苦しみ、悲しみ、絶望、色々な感情が乗せられている。
お金よりも、私はその人の人生の重みを感じて、人の時を感じる方が好きなのよ」
理由はわかった？とホークスに振り向く。細毛で長く、緩くウェーブがかかる金髪と一昔前のヨーロッパの貴族のような格好は、まるで人形のように美しかった。
「……うん、分かったよ」
ホークスはその石をギュッと握りしめた。
「俺はさ、多分、ヒーローになるべき理想像には程遠い人間だったんだ。
でもヒーローになって、色んな人に好いてもらってる。
ヒーローとして認めてもらってる。
これでいいのかと思いながらも、皆の前ではいいヒーローを見せている。
俺のヒーロー像とは違う俺を知っているのは、Aだけだと思うんだ。でもそれがいい事だとは思わないよ。
誰かだけが知っているということは、その人だけが背負っているというのと同じだから。
それでも俺は、その人を幸せに出来たらいいなと思ってる。
──これでどうかな？」
満足気に微笑むマスターは、1度パチンと指をならした。
「いいわ。その石、持って行って頂戴。
紅茶を入れるから、そこに座って」
ダイニングテーブルのような場所に目をやり、マスターはお湯を沸かし始める。
椅子に座ったホークスに、マスターはポツリポツリと話し始める。
「……Aは、いい子でしょう。とても素直」
「はい。クセもありますけどね」
「……そうね。あれは確かに悪いクセね。でも酷く芯の強い、真っ直ぐな悪いクセ」
「どういうことです？」
会話は途切れることなく進んでいく。
「あの子は生まれてからずっとずっと人の手によって歪まされてきた人間。歪み続けていくものは、そう、弾性力が働くような、地震が起きるような……うん、そんな性質で元に戻っていくの」
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桜芽杏(プロフ) - えだまめさん» ひぇ〜嬉しい……！！ありがとうございます！！実はガチの趣味で書いていた物をその場のノリで載せ始めたので、こうして好きと思われて読んでくださることにとても喜びを感じます……！クライマックスも近いですが、どうぞ最後までお付き合い下さい！！ (2020年4月18日 18時) (
レス) id: 4e2ed4ed51 (このIDを非表示/違反報告)
えだまめ(プロフ) - 好き…………好きです…………ちょっと不器用なホークスも可愛いのにカッコイイ夢主も雰囲気が独特なお兄さんもそれぞれを表現している桜芽杏さんの透明感のある文章も全て好きです応援しています…… (2020年4月17日 21時) (レス) id: 4f7195255d (このIDを非表示/違反報告)
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