三十四滴。 ページ34
小川の水がサラサラと流れゆくように試験は終わった。
筆記試験も実技試験も、自分の意識があったのか危ういくらい記憶がない。自分が解答欄に何を書いたのかも思い出せない。
実技試験も、数えていたロボの数を思い出せない。試験終了時、何体のロボを倒し安心したのか不安になったのか。それもまた覚えていなかった。
制服に着替えている時、今いる世界は現実なのか夢の世界なのか。本気でそう考えてしまった。白い
けれど、そんな中私を夢と現実の境目から引っ張り上げてくれたのは、鋭児郎だった。
「よっ！ お疲れ！」
いつものように、ギザ歯を見せてお気楽そうに笑う彼はポンと私の肩に手を置いた。その小さな衝撃でふと我に戻る。
彼に触れられたこの手の感触は何度も感じたことがある。そして、声も。
「……疲れたわ」
「どうだった？ 結果は」
「まぁまぁね。鋭児郎は？」
「俺も！ まぁまぁだな！」
試験会場から外に出ようと来た道を戻っていく。違和感のある息苦しい空気、見慣れない問題、立ち向かってくるロボット。
全てが新しい環境でとても緊張していたのに、いつも一緒にいた鋭児郎といるだけでその緊張感はほぐれていく。
彼はとても荒っぽくてガサツなはずなのに、私を
その謎は最近になって解明された。
彼はいつだってまっすぐだった。人が離れていく私に彼は彼自身から近づいてきた。家柄でもなく顔でもなく、彼は私と話していて楽しいからという理由で一緒にいてくれた。
噂による一方的な私への価値観は小学生の頃から続いていた。それは誰が流したものなのか、誰が広めたものなのか、誰が上乗せしたのかは知らない。
誰も、私自身も変えようとしなかったそんな噂を、彼はひるむことなく断ち切っていった。そんなまっすぐな彼を、他人の価値観に左右されない彼を見てから私はヒーローになりたいという願いがどんどん強くなっていった。
それから性格も、口調も、すべてが変わっていっているような気がした。
ある日、文化祭で使う小道具として水にインクを混ぜていた時だった。
インクが、くるくると混ぜていく度に水に溶けていくのを見て、ふとこう思ったのだ。
透明な水が色に溶けると色が変わるように、私も、彼の色に溶けてしまったのだと。
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夜桜瑠奈(プロフ) - 鈴さん» 切島くん推しの方ですか…！それは頑張らなければなりませんね！もっと切島くんを好きになるような小説を頑張って書いていこうと思います！更新頑張らせていただきますね！ (2018年6月6日 7時) (
レス) id: cfb2d701c2 (このIDを非表示/違反報告)
鈴 - 切島君おしですから楽しみです！更新頑張ってください！！ (2018年6月6日 1時) (レス) id: 807c8d7ebc (このIDを非表示/違反報告)
夜桜瑠奈(プロフ) - 龍姫さん» あまりお嬢様キャラは書いたことがなかったので、新鮮でとても楽しく書かせてもらってます！私は荒っぽい性格なので、ちゃんとお嬢様キャラをかけていたか心配だったので、そう言って頂き安心しました…！ご期待に添えれるようこれからも更新させて頂きますね！ (2018年6月4日 16時) (レス) id: cfb2d701c2 (このIDを非表示/違反報告)
龍姫 - 夜桜瑠奈さん» お嬢様が相手なんていいな・・・。上品な感じが伝わりました。二人の展開はどうなる？更新楽しみにしながら待ってます。 (2018年6月4日 10時) (レス) id: 8569ec9184 (このIDを非表示/違反報告)
夜桜瑠奈(プロフ) - 蕾さん» ですねぇ！！漫画を読み直しているとき、彼の男気に改めて惹かれてしまい、切島くんメインの小説を書くことに決定しました！これからもかっこいい切島くんを書けるよう頑張りたいと思います！ (2018年6月3日 23時) (レス) id: 16b29f0b45 (このIDを非表示/違反報告)
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