十全十美 ページ10
Aが家に来てから少しした時に、彼女は部屋の当たりを見渡した。
「本ってある？」
マイクは少し考えるように腕を組んでうなっていた。しばらくすると、ハッとした顔になり、「少し待ってろ！」と楽しそうに自室へ向かった。
「昔俺が使ってた国語の教科書やリスナー達にもらった小説、俺が載ってる雑誌たちさ！ ……あ、でも漢字が難しくて読めないか……？」
Aの目前の床に何冊かの本を広げてみるが、今のAには難しい内容の本しかないことに気づく。
今から幼児向けの本を買いに行くか。しかしまだこの家に来たばかりのAを一人にしておくのは危険だ。かと言って一緒に行こうと言うのも、まだ外の世界に慣れていないし危ないだろうか。いやでもこの歳ならもう幼稚園やら小学校やらに行っている時期か。
様々な思考が入り交じり、まず最初に何を考えていたかも忘れてしまいそうになった頃、Aは国語の教科書を持ってマイクに顔を向けた。
「教えて、パパ。私にはまだ分からないことがたくさんあるから」
そこで再度気付かされる。自分はこの子の父親だ。父親ならば、それはもちろんこの子に自分の知識や経験、体験、失敗を教えるものだろうと。
「そうか……そうだな！！ よし、A、一緒にお勉強しよう！！」
マイクとAは、二人で低反発の大きなソファに座り、一冊の本を一緒に覗き込んでいた。
数十分、数時間と、ただ淡々とAが本を読み進み、そして分からない言葉や読み方があればマイクが教えた。時々眠そうにするAは、目を擦りながら長い前髪を気にすることなく本を読み進める。
マイクが冷たいお茶を差し出すと、「茶色い水、お茶だよね」と物知りなったような気分になったのか、足をばたつかせながら飲み干した。
窓から差し込む光が完全に月明かりになった頃、マイクは短針が七を指す時計を見てもうこんな時間か、と本を閉じた。
「今日はこれくらいにするか！ A、腹減ってないか？」
「……眠い、寝ていい？」
マイクが言葉を返す前に、Aはマイクの腕の中へ潜り込み、すやすやと寝息を立てて眠ってしまった。
その寝顔を見てマイクは口元をほころばせた。
明日はもう少しで読み終わるこの教科書の読み聞かせをしてやろうか、なんの本を買ってきてやろうか。
Aが本を読んでいる時の仕草や楽しそうな声色を思い出す度、心が無重力空間に浮いているようの不思議な気持ちになっていた。
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紫苑(プロフ) - うわああああ待って涙で前が見えないけどブラインドタッチィ―！うっうっ、涙腺が、涙腺が崩壊するたしけて (2月28日 17時) (
レス) @page47 id: 89604d43a6 (このIDを非表示/違反報告)
ただのらぁめん - 夜に読んでボロ泣きしました､､最ッッッ高でした (2023年4月2日 0時) (レス) @page47 id: 2cf0465f68 (このIDを非表示/違反報告)
San(プロフ) - 涙が止まらない素晴らしい作品でした（ ; ; ） (2023年3月1日 13時) (レス) @page45 id: b5216021f9 (このIDを非表示/違反報告)
rusya.(プロフ) - マイクパパｯｯｯｳｩｯｯ号泣。。素晴らしい物語に感化されました。ありがとうございました。。 (2022年12月13日 0時) (レス) @page47 id: f22ef2da16 (このIDを非表示/違反報告)
化け猫 - 涙が止まらないｯ!素敵な作品を作って下さりありがとうございます!生きてて良かったと思いました!(T^T) (2022年9月27日 16時) (レス) @page47 id: 7ab55173a1 (このIDを非表示/違反報告)
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