十六夜 ページ16
点滴の滴る音が数回響いた後、Aはぎゅっとシーツを握りしめながら口を開けた。
「……パパの家に住み始めて二週間後ぐらいに、パパがたくさん本を読み聞かせてくれて、個性のことについて詳しく知ったの。
その時に私の個性はなんなんだろう、って考えてたの。そしてね、その日の夜に寝たら、こう、ぶわーって分かったの」
「ぶわーっ……？」とイレイザーが首をひねると、Aは少し困った表情になる。
「なんか、知らないヒト……？妖怪？みたいなヒトが教えてくれたの」
「妖怪って」と、マイクとイレイザーは口を揃えて言った。Aと関係のある妖怪、と言えば、Aを見つけたあの夜に戦った脳むき出しの怪物。あれを妖怪と呼ぶ者は呼ぶだろう。
もしかしたら、彼らがAの"本当の親"なのかもしれない。二人は複雑な心境になり、あの日の二匹のAの親のことを思い出した。
「えっとね、確か私の個性は"活性化細胞"と"効率化"、まだほとんど使ったことないけど"機能停止"だって言ってたよ」
使い方も教えてもらったの。Aは嬉しそうに口元をほころばせた。
イレイザーはマイクの方へと顔を向けた。
少なくとも彼は、人の家庭環境に口を出すつもりは無い。たとえそれが養子出会ったとしても、怪物の子供であったとしても、イレイザーの考え方は変わらない。
「A」
マイクに名を呼ばれたAは、上を見上げた。頭に巻いていた包帯を取っていたマイクはサングラスもかけておらず、髪もぐしゃぐしゃになっている姿であった。
「ごめんな」
まだ包帯の巻かれている手をAの頭に当てて、優しく頭を撫でた。
『……ゴメ、んネ』
誰かの知らない声が聞こえた。
「……どうして謝るの？」
マイクに、パパに会わなければ路地裏で凍死していたかもしれない。孤児院で孤立していたかもしれない。いつも世話を焼かせてしまって、謝らなければならないのは自分の方だと言うのに。
「パパ、大好きだよ？」
ベットの上に乗り込んで、Aは静かにマイクを抱きしめた。少しぎこちなく、どこかの小説で覚えたのだろうか、マイクの肩に顔を何度も置き直していた。
出会ってから一ヶ月少し。
けれどAの精神的な成長年月ははおよそ六、七年。
「……ああ、俺もだよ」
ぎゅっと、強く抱き締め返しながらふと思う。Aはこれで幸せなのかと。
わからない。わかることはないだろうが、少なくともマイクは、Aを幸せにしていると言いきれたのだ。
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紫苑(プロフ) - うわああああ待って涙で前が見えないけどブラインドタッチィ―！うっうっ、涙腺が、涙腺が崩壊するたしけて (2月28日 17時) (
レス) @page47 id: 89604d43a6 (このIDを非表示/違反報告)
ただのらぁめん - 夜に読んでボロ泣きしました､､最ッッッ高でした (2023年4月2日 0時) (レス) @page47 id: 2cf0465f68 (このIDを非表示/違反報告)
San(プロフ) - 涙が止まらない素晴らしい作品でした（ ; ; ） (2023年3月1日 13時) (レス) @page45 id: b5216021f9 (このIDを非表示/違反報告)
rusya.(プロフ) - マイクパパｯｯｯｳｩｯｯ号泣。。素晴らしい物語に感化されました。ありがとうございました。。 (2022年12月13日 0時) (レス) @page47 id: f22ef2da16 (このIDを非表示/違反報告)
化け猫 - 涙が止まらないｯ!素敵な作品を作って下さりありがとうございます!生きてて良かったと思いました!(T^T) (2022年9月27日 16時) (レス) @page47 id: 7ab55173a1 (このIDを非表示/違反報告)
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